2016 Fiscal Year Research-status Report
繰り返し学習に対応したLMSの開発と学習時間の分析
Project/Area Number |
15K01092
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邊 博之 日本大学, 工学部, 教授 (40147658)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 工学教育 / MTS / コースウェア / クレペリン検査 / 作業量 / 脳波 / 利き手 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマに関連して,次の(1)と(2)の2つの研究を行った。 (1)先ずはテーマ「C言語演習問題コースウェアにおける学習データのマハラノビスによる評価」である。学習支援システムに用いられる演習問題コースウェアは,合格点に到達するまで同一問題に複数回回答する繰り返し回答型と,合格点とは無関係に学習時間内で1回だけ回答する1回回答型に分けられる。これらによって得られる学習データには学習時間と得点とがあり,繰り返し回答型では学習時間が,1回回答型では得点が評価の対象になる。本研究では,C言語演習問題コースウェアを対象に,繰り返し回答型の学習時間内の合格時間と平均点を用いることによって単位空間を作成し,学習データ(学習時間,得点)からコースウェアの妥当性や学習者の能力を評価している。また,学習データのマハラノビス距離D2から学習者を4グループに分類し,SN比によってD2を大きくする問題項目の要因と各グループの学習者の特徴を明らかにしている。更に,繰り返し回答型の単位空間を用いて1回回答型の学習データを評価し,繰り返し回答型との差異を比較している。 (2)次はテーマ「クレペリン作業時における脳波と作業量の分析」である。クレペリン検査,IQテスト,SPIなどは一定時間内の作業量の多さと,誤りの少なさから適性や能力を検査するものである。一定時間内の作業量の多さなどを解明することは,工学教育の分野における能力の違いのメカニズムを解明する上でも有用である。本研究では,クレペリン検査の作業量において回答数と,α波とβ波の各帯域におけるパワーの含有率の比(Cα/Cβ)との関係を,利き手による影響,及び男女差による影響について解明し,Cα/Cβ,左右の脳の部位,及び電位マップから考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマに関連して,次の(1)の論文発表と(2)の学会発表を行い,研究成果を得ることができたため「おおむね順調に進展している」とした。 (1)先ずはテーマ「C言語演習問題コースウェアにおける学習データのマハラノビスによる評価」である。C言語演習問題コースウェアを対象に,繰り返し回答型の学習時間内の合格時間と平均点を用いて単位空間を作成し,学習データ(学習時間,得点)を評価した。その結果,繰り返し回答型の学習時間の短いグループは80%であった。また,学習時間の長い問題項目はwhile文であった。次に,繰り返し回答型の学習データを用いて単位空間を作成し,1回回答型の学習データを評価した。その結果,1回回答型の高得点グループは78%であった。学習時間が長い問題項目は繰り返し学習と同じwhile文と,更に加えて関数(参照渡し)であった。 (2)次はテーマ「クレペリン作業時における脳波と作業量の分析」である。クレペリン作業において回答数の多いのは,男女に関係なく左脳前頭部のα波とβ波のバランスが良いほど回答数が多いことを明らかにした。また,右利き男性は左脳と右脳に相関はないが,両利き男性と右利き女性は左脳と右脳のCα/Cβの値が同じ,すなわち左脳と右脳のバランスが良れば誤答数が少ないことを明らかにした。日常の生活において,右利き男性は左手を意識的に使えば右脳が活発になり,回答数が増すと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究テーマに関連して,次の(1)と(2)の研究課題が残されている。次年度は,これらの研究を推進させる予定である。 (1)先ずはテーマ「C言語演習問題コースウェアにおける学習データのマハラノビスによる評価」である。マハラノビスは単位空間を基にさまざまなコースウェアや学習者の学習データの評価など工学教育の分野に適用することが可能である。今後,得られた結果を基に繰り返し回答型や1回回答型のC言語演習問題コースウェアの再構成に活かし,学習時間の短縮や得点の向上につながるかを検討する予定である。また,年度別の学習データの差異や,英語など他のコースウェアの分析にマハラノビスによる分析を活用していく予定である。 (2)次はテーマ「クレペリン作業時における脳波と作業量の分析」である。両利き男性や右利き女性は,回答数が多く,誤答数の少ない作業が行われていた。今後,右利き男性の左脳と右脳を共に活動的となる方法を提案し,作業量の増加につながるかを解明する予定である。提案については,例えば日常の生活において,右利き男性は左手を意識的に使うことによって右脳が活動的になり,リラックスが高まることから回答数が増加すると考えられる。また,リズム音や音楽を聴きながら作業をすればリラックスが高まり,回答数が増すと考えられる。更に,クレペリン作業以外のIQテストやSPIなどでは誤答数とCα/Cβとがどのような関係になるかを解明する予定である。
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