2015 Fiscal Year Research-status Report
展示・収蔵施設の大気質改善に関する研究ー有機酸等除去剤の改良および性能評価ー
Project/Area Number |
15K01137
|
Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
渡辺 智恵美 別府大学, 文学部, 教授 (40175104)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 典由 愛媛県産業技術研究所(紙産業技術センター), その他部局等, 研究員 (80502898)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 空気汚染物質 / 展示収蔵施設 / 有機酸除去 / 紙素材 / カキ殻粉末 / 抄紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館や美術館等の展示収蔵施設では、建屋や内装材、展示ケースや展示台等から発生する酢酸やギ酸等の有機酸が収蔵品の劣化原因になることが知られている。原因として、1970年代頃から「新建材」とよばれる材料が多用されるようになったことがあげられる。この問題を解決してより良好な保管環境を整備するために、空気質のモニタリングや有機酸やアンモニアが展示収蔵品に及ぼす影響について調査・研究が実施されるようになった。また、多くの展示収蔵施設においてもこれらの問題が周知されるようになってきた。 しかし、展示収蔵施設内の空気質の改善は、大掛かりな設備や除去剤が高価なため、中・小規模施設では有機酸対策の重要性は認識していても対策が行えていないのが実情である。 以上の状況をふまえて、平成24~26年度は当該補助金を受けて、有機酸除去のための簡易で安価な方法や素材の開発に取り組み、カキ殻粉末を添加して抄紙した有機酸除去シート(以下、除去シートとする)を開発し臨床実験を行った。その結果、いくつかの課題が残ったため、これを解消しさらに研究を発展させる方向で取り組んだ。 本研究では、前回から継続して展示収蔵施設の現状調査を行うとともに協力施設で臨床実験を実施し、有機酸除去シートの性能評価(ラボ実験および臨床実験との差違の把握、有効期間など)を行い、データの蓄積を図るとともにシートの有機酸吸着量や有効期間、初期の有機酸濃度とシートの必要面積の相関などに関する数値的裏付けについて検討する。さらに、展示中に除去シートが展示の雰囲気を妨げないようにしながら除去効果をあげるための方法として、展示パネルや展示台への転用も視野に入れて製品を開発する。あわせて、開発した有機酸除去シートを安価で供給できる方法を探る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
除去シートの吸着量の測定については、イオンクロマトグラフを用いる手法が概ね確立できたが、濃度に対する有効な除去シート量(面積)や持続性について正確に評価する方法が確立できておらず、今年度はまずこの問題の解決を重点課題とした。展示ケースの見立てたデシケータを利用し、酢酸を定期的に噴出できる装置を作製し、初期濃度と酢酸吸着量の相関を求めるラボ実験を行った結果、①初期濃度が高いほど吸着量も多くなること、②吸着量は試験日数と比例して増加するが、徐々に頭打ちになること(吸着能力が低下)、③飽和量に達する時間が予想以上に早くなることなどが確認できた。現在、実験を続けており、長期的な動向を確認中である。今後はさらに初期濃度の違いや除去シート量を変え、実験を継続sする予定である。 博物館等での臨床実験は前回の調査の協力館および新規の施設で従来と同じ方法で実施しているが、展示替えなどにより、充分な結果を得られるに至っていない。今回は、除去シート量を増やし、長期的な動向を調査している。 今年度より開始する予定であった実証実験(木製展示台と除去シート吸着量の相関関係と飽和時期の確認)が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きラボ実験において有機酸(酢酸)の初期濃度と吸着量の実験を行い性能評価を行う。それにより除去シートの適正量を算出し、臨床実験に移行してデータの蓄積を図る。あわせて今年度実施できなかった木製展示台と除去シート吸着量の相関関係を探る実験を早急に開始する。 有機酸の除去能力をさらに高める方法として、除去シートを利用した展示パネルや展示台を製作し、ラボ実験および臨床実験で効果を確認する。さらに協力施設の職員に使い勝手や質感などの聞き取り調査を行い、改良する。 開発した除去シートを安価で供給できるような方法を探る(一般の工場レベルでは大量に抄紙しなければならず、中・小規模の展示・収蔵施設では一時的に高額な予算を組んだり、大量の除去シートを保管する必要が発生するため、導入が難しくなる。少量の製作になると単価が上がり、安価な供給ができなくなる)。
|
Causes of Carryover |
臨床実験を実施する展示収蔵施設の増加ができなかったことやすでに臨床実験を行っている協力館で長期的な動向を見るため、調査回数が少なくなり調査旅費が未使用となった。あわせて、木製展示台と除去シート吸着量の実験を行う予定であったができなかったため器具を購入しなかった(別府大学分)。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は協力館を増やすとともに上記の実験を実施するために器具を購入する。 繰り越した経費を利用して、除去シートを利用した展示パネルや展示台の製作を予定より増やして実験を行う。
|
Research Products
(3 results)