2017 Fiscal Year Research-status Report
展示・収蔵施設の大気質改善に関する研究ー有機酸等除去剤の改良および性能評価ー
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15K01137
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
渡辺 智恵美 別府大学, 文学部, 教授 (40175104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 典由 愛媛県産業技術研究所(紙産業技術センター), 技術支援室, 主任研究員 (80502898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 博物館 / 展示・収蔵施設 / 空気汚染物質 / 有機酸 / 有機酸吸着シート / 紙素材 / カキ殻粉末 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館等の展示・収蔵施設における汚染空気物質のうち、有機酸(主として酢酸・ギ酸)の軽減を図るため有機酸吸着シート(以下、吸着シートとする)を開発し、ラボおよび施設での臨床実験を行い、データを蓄積するとともにその効果について検証してきた。 28年度の結果を踏まえて、①吸着シートの性能を延ばすために吸着量と効果の持続性についてさらに精査する、②展示中に並行して利用できるように吸着シートを改良する、③吸着シートの製品化と安定した供給システムの構築を目標に研究に取り組んだ。 今年度は臨床実験施設を新たに2ヵ所増やし(合計8ヶ所)、展示ケース内に吸着シートを設置し、有機酸の初期濃度(未設置)から推奨濃度(430マイクログラム/1立方メートル)に下がるまでに要した日数と持続期間を調査した。あわせて展示中も並行して吸着シートを設置できる一方法として、展示台の内側の空間に細切りにした吸着シートを充填したり、吸着シートを数枚張り合わせてパネル状にして有機酸の軽減を図る実験を行い、効果を調査した。その結果、吸着シート量が同じである場合、シートを広げた状態で設置するほうが吸着効果は高くなった。現在、設置量を変えて実験を継続中である。これは、これまで行ってきた展示ケースの臨床実験でも同様の傾向が認められ、効果は設置量よりも設置面積の大小によって決定されることが確認できた。また、有機酸吸着量については、吸着シートを設置した初期段階で大幅に吸着され、吸着シート1平方メートルあたり、酢酸2g、ギ酸0.5gとなり、予想よりも多い吸着量であった。効果の持続性については、ラボ実験では概ね把握できたが、臨床実験では、気温の上昇に伴う建材等からの有機酸の放出量が妨げとなり十分に確認できなかった。これについては、ラボ実験の結果を参考にしつつ、吸着シートの交換を行うのが善作と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
展示中に吸着シートを利用できるように改良する必要があるが、ラボ実験に留まっている。また、試作した有機酸吸着シート(以下、シートとする)の製品化と量産化のために小規模に抄紙できる工場と調整中であり、実際の取り組みが遅れている。実際に工場で抄紙するためには単独で抄紙する期間を作る必要があり、工場レベルでは難しいようである。また、通常は大量に生産することでコストダウンを図るため、必要量以上に購入する必要が出てくるため、今回の研究の一目標である「安価で供給できる」か否かが課題となる(単価では低コストとなるが、大量生産した場合、いわゆる「まとめ買い」をする必要があるかもしれない)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗状況を踏まえて、 ①展示中に並行して有機酸吸着シートを利用できるような形状・大きさ(吸着効果に対する必要量)を考える。形状は展示パネル形式が最も適していると思われるので、展示・収蔵施設での臨床実験で大きさを決定する。 ②工場と調整を図り抄紙する。
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Causes of Carryover |
有機酸吸着シートの製作費および打ち合わせのための旅費(共同研究者が所属する愛媛県紙産業技術センターおよび実際に吸着シートを生産する工場)
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