2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01162
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
山田 周二 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80295469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土砂災害 / 石垣 / 土地利用 / 扇状地 / 防災教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
大阪平野の北縁部,北東縁部,東縁部に位置する,北摂山地南麓,枚方丘陵西麓,生駒山地西麓を対象として,石垣の高さと石垣を構成する石の種類とを調査した.石垣の高さは,レーザー距離計で計測した.石の種類は,円礫,角礫,間知石,割石,の4種類に区分した. 石垣の高さは,地形と関係があり,低地,扇状地,丘陵地の順に,石垣の高さは高くなることが明らかになった.低地では,高さが2 mを超える石垣は,低地の石垣全体の0.4%とほとんどみられない.これに対して,扇状地では5.2%あり,丘陵地では15.7%を占める.また,高さが3 mを超える石垣は,低地および扇状地では,それぞれ0.2%,0.5%とほとんどみられないのに対して,丘陵地では,5.4%みられた.以上のような石垣の高さと地形との関係は,傾斜の違いに起因していると考えられる.低地はほとんど平坦であるのに対して,扇状地および丘陵地では,数度程度の傾斜があり,丘陵地の方が,より急傾斜地を含んでいる.傾斜が急であるほど,平坦地をつくるための石垣は,より高い必要がある.このため,高い石垣は,急傾斜地を含む丘陵地に多く,平坦な低地には少なかったのであろう. 石垣を構成する石の種類は,扇状地と丘陵地とでは異なる傾向がある.扇状地では,角礫の石垣は,全体の85%と多くを占めるのに対して,丘陵地では,38%に過ぎない.一方,間知石は,扇状地では4%を占めるにすぎないのに対して,丘陵地では24%を占める.以上のように,ある程度,地形による石の種類の違いは見出されたものの,地域差もみられ,北摂山地南麓では,円礫が,低地でも扇状地でも丘陵地でも14%以上を占めていたのに対して,他の地域では,いずれの地形でも,ほとんどみられなかった.以上のことから,石垣を構成する石の種類は,地形による影響はある程度あると考えられるが,それ以外の要因もあるものと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,大阪平野の周縁部の低地,扇状地,丘陵地を対象として,石垣に関する野外調査を行うことができた.野外調査において,高さを計測するレーザー距離計および調査結果を入力するタブレット端末を有効に利用することによって,効率的な野外調査を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展開は,2つある.一つは石垣を構成する石の種類の地域差の要因の解明である.石の種類の地域差の要因をあきらかにするために,奈良盆地,京都盆地,六甲山麓といった広い範囲で野外調査を行う.もう一つは,全体のとりまとめである.本年度は最終年度に当たるため,これまでに行った調査全体のとりまとめを行い,成果を公表する.
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Causes of Carryover |
当初の見込みよりは安価に物品を調達できたため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
野外調査および成果発表のための旅費の一部とする.
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