2015 Fiscal Year Research-status Report
農山漁村におけるフードデザートの析出-店舗の食品群充足度調査を用いた学際研究-
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15K01169
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
岩間 信之 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (90458240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 耕市 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20372716)
浅川 達人 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40270665)
駒木 伸比古 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (60601044)
佐々木 緑 広島修道大学, 人間環境学部, 教授 (70401304)
池田 真志 拓殖大学, 商学部, 准教授 (70555101)
熊谷 修 人間総合科学大学, 人間科学部, 教授 (80260305)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フードデザート問題 / イギリス / 日英比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の1年間,研究代表者はエディンバラ大学に滞在し,イギリスでフードデザート(以下,FDsと略記)研究を進めるJown Dawson名誉教授たちと,研究交流を進めた。 【研究目的と成果】2015年度の研究目的は,下記の3点であった。①英国における食品群充足度調査の研修と現地調査。②日本人の食生活を考慮した,健康維持に必要な食品群指標の作成。③国内における研究対象地域の選定。食品群充足度調査については,Jown Dawson名誉教授を中心としたFDs研究グループと緊密に交流し,調査方法のノウハウを習得した。また,同グループの研究対象地域を回り,イギリスにおけるFDs問題の現状や,研究対象地域での食品群充足度調査方法を学んだ。②については,日本独自の食品群指標が必要であることが確認された。現在,研究分担者である熊谷教授たちとともに,食品群指標を作成中である。③については,茨城県牛久市(大都市近郊の農業地域),および鹿児島県南大隅町佐多地区(都市遠郊の漁村)を選定した。 【現地で得られた知見】イギリスでは,まちなかの特定地域において,低所得者層を中心とした健康被害が拡大している。1990年代には,この要因として,商店街の空洞化による食料品アクセスの低下が注目された。その結果,行政主導による買い物先空白地区でのスーパーや移動販売車の出店が進められた。しかし,住民の食生活はほとんど改善されなかった。2000年代に入ると,学術面からのFDs研究が進み,買い物利便性の改善が,住民の食生活にほぼ寄与しないことが明らかとなっている。現在は,食料品アクセスに代わる,FDsの新たな規定要因が調査されている。 【論文執筆】日本のFDs研究を欧米の研究者に認知してもらうため,学術論文を英国の国際誌に投稿した。また,日英におけるFDs問題の比較研究論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の研究目的のうち,①英国における食品群充足度調査の研修と現地調査,および③研究対象地域の選定については,当初の目的を十分に達成していると考える。なかでも①は,現地の研究者たちと緊密な研究交流関係を蓄積できたため,様々な情報や経験を蓄積することが出来た。 ②健康維持に必要な食品群指標の作成については,研究代表者が渡英していたこと,および当初想定していた食品群指標を修正する必要性が明らかになったことの2点から,研究に若干の遅れが生じている。しかし,2016年3月以降,共同研究者である熊谷教授やその他栄養学の専門家たちと綿密に連絡を取りながら,同指標の作成を進めている。2016年7月までには,食品群指標の作成が完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度における具体的な調査内容は,下記の通りである。 ①食品群指標を用いた,牛久市の全食料品店に対する取扱商品のチェック。②牛久市の高齢者を対象とした,個人属性,買い物行動,食生活,家族・地域との繋がりなどの関するアンケート調査。③前掲の①~②の調査、およびGISを用いた食料品アクセスを基にした,精度の高いフードデザートマップの作成。 牛久市役所および自治会とは研究交流を密に交わしており,調査協力の確約もいただいている。そのため,2016年度の調査は,問題なく遂行出来ると確信している。①については,現在,熊谷教授をはじめとした栄養学の専門家たちと,高齢者の健康的な食生活維持に必要な食品群指標を作成中である。この指標は,2016年6月には完成予定である。これを用いれば,雑貨店やコンビニといった小規模な食料品店が,どの程度高齢者の健康的な食生活維持に寄与するのかを,生活に測定できる。②については,現段階では新たにアンケート調査を実施する予定でいる。しかし,筆者たちは2014年度に,牛久市全域で同様の調査を実施済みである。場合によっては,2014年度の調査結果を活用することも想定している。③については,地図の制作方法を,研究グループ内で協議中である。この地図が出来上がれば,従来のフードデザートマップや買い物弱者マップよりも,より正確にフードデザート問題を空間的に把握することが可能となる。 2017年度は,牛久市での調査を踏襲して,鹿児島県南大隅町で,同様の調査を実施する。
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Causes of Carryover |
熊谷先生を中心に進めている、日本での高齢者の健康的な食生活を維持するのに必要な食品群のリスト作成が遅れたため、その経費が未使用であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度において、上述のリストを作成する。その費用として次年度使用額を用いる。
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Research Products
(7 results)