2017 Fiscal Year Research-status Report
波源を含む広域解析と陸域での三次元解析を連動させた津波被害全体像予測モデルの開発
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15K01249
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米山 望 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90371492)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 津波 / 三次元数値解析 / 津波氾濫 / 津波漂流物 / 転倒モーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
A)津波災害全体像予測モデルの開発 津波災害全体像予測モデル(以下、本モデル)の有する機能のうち、漂流物挙動解析機能について、水理実験結果と比較し、その妥当性を検証とした。対象とした水理実験は、一様勾配(1/10)の海岸地形とし、汀線位置に防潮堤を設置した条件で、沖合から孤立波を入射させ、防潮堤前面に設置した漂流物を防潮堤に衝突させた。解析範囲のうち、汀線近傍から岸側を三次元解析領域、それ以外を平面二次元解析領域のハイブリッド解析とした。その結果、防潮堤に向かう津波挙動や漂流物の軌跡などに関し、水理実験結果を概ね再現することが分かった。しかし、漂流物の衝突力については実験との乖離が見られた。本解析では、漂流物や防潮堤を剛体として表現しているため、その妥当性を含め、衝突力の再現は今後の検討課題として残った。
B)本モデルを用いた災害メカニズムの検討 本モデルを用いて、建物に作用する津波水平力による転倒モーメントが周辺建物群の配置によりどのように変化するかについて検討した。対象としては、2011年東北地方太平洋沖地震津波でRC建物が流出した女川町市街地に注目した.同津波の波源を含む領域から女川町市街地までを解析対象領域とし、女川町市街地を三次元解析、それ以外を平面二次元解析とするハイブリッド解析とした。その結果、流出したRC建物に向かう津波の流れを弱めることで転倒モーメントを低減する周辺建物群配置と、流出したRC建物の後ろへの水の流れ込みを阻害することで転倒モーメントを増大させる周辺建物群配置があることや、転倒モーメントを変化させる効果の大小は建物の組合せによって大きく変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発中の津波被害全体像予測モデルを用いて、2011年東北地方太平洋沖地震津波において女川町市街地で発生したRC建物の流出メカニズムについて分析し、RC建物が受ける回転モーメントの大きさが周囲の建物群の配置の影響を受けていることが分かったことは、大きな進展と言える。 一方、津波被害全体像予測モデルの重要な機能である津波漂流物解析について、漂流物の移動軌跡をおおむね解析できるようになったが、漂流物が防潮堤等に衝突した際の衝突力の予測結果が既往の実験などと比較して十分でなかった。そのため当初の最終年度に予定していた釜石市甲子川にかかる矢の浦水管橋の漂流(流出)現象を対象とした解析も津波漂流物解析機能を使用するため実施できなかったことからやや遅れているといえるが、研究期間を一年延長したことにより、研究期間内に当初の目的を達成することが可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、以下のことを実施する。 1)津波災害全体像予測モデルの開発:今年度、十分な成果が得られなかった、漂流物が防潮堤等に衝突した際に発生する衝突力の予測精度向上のため、衝突力評価手法を改良する。 2)津波災害全体像予測モデルの検証と災害メカニズムの検討:開発した手法を、釜石市甲子川にかかる矢の浦水管橋の流出現象に適用し、津波波力解析、漂流解析および広域解析の3つを結合した解析の妥当性を確認する。この流失では、実際に流失が発生した時刻がわかっておらず、水管橋が沈んだ位置のみが把握されている。よって、本検証では、津波により水管橋が漂流を開始し、確認された位置に沈む現象を再現できるかどうかを対象とする。現象を適切に再現できた場合には、流失を防ぐために満たすべき条件について検討する。
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Causes of Carryover |
開発中の津波被害全体像予測モデルの一つの機能である漂流物衝突力の解析機能が不十分であったためモデルとして完成しなかった。そのため、複数台の高性能PCを用いた解析による津波被害全体像予測が実施できなかった。今年度は、高性能PCを複数購入し、大規模な津波被害全体像予測を行う予定である。
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