2015 Fiscal Year Research-status Report
拘縮時の坐骨神経周囲組織の病的変化の機序と理学療法学的治療についての検討
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15K01412
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
細 正博 金沢大学, 保健学系, 教授 (20219182)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 拘縮 / 坐骨神経 / ラミニン / Ⅳ型コラーゲン / 免疫染色 / 可動域運動 / 神経モビライゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット膝関節拘縮モデルによる、拘縮時に出現する坐骨神経周囲組織の変化が、どのような機序で出現するのかを明らかにするため、免疫組織科学的検討を行った。具体的には拘縮時に発生する坐骨神経束と神経周膜の「密着」および神経周膜の線維化について、その機序を明らかにするため、細胞接着分子の一つであり、基底膜の主要構成成分でもあるラミニンおよびⅣ型コラーゲンの免疫染色を行った。その結果、神経周膜最内層および神経束の髄鞘周囲(シュワン細胞周囲)でラミニンが陽性となったが、コントロールと比較して拘縮群では、神経周膜最内層に限局してラミニンの染色性が低下していた。一方、拘縮群に対して可動域運動を行った群では、コントロール群との差は見られなかった。コントロール群、拘縮群の間で、Ⅳ型コラーゲンの染色性に変化は見られなかった。この結果から、膝関節拘縮時に出現する坐骨神経周囲の病的変化には、局所環境のラミニンの産生/分解に何らかの変化が起きていること、この変化が坐骨神経と神経周膜の「密着」を引き起こしている可能性があること、可動域運動を行うことでこの変化は抑制できると考えられることこと、同じく基底膜の主要成分であるⅣ型コラーゲンには変化が見られないことが示された。これらの結果は本研究にて今回初めて明らかにされたものであり、関節拘縮の病態を明らかにするための重要な発見と考える。また、この病的変化が可動域運動で抑制できる可能性が示唆されることにより、最も適切な理学療法手技、および理学療法の新たな可能性を提示出来ることになる。またこれまで、科学的、医学的な証拠に基づいた検証が行われていない軟部組織モビライゼーションや神経モビライゼーションの有用性、有効性を含め、拘縮治療の新たなエビデンスを得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の平成27年度研究計画は、「坐骨神経周囲の変化を病理組織学的および免疫組織化学的に観察し、軟部組織性拘縮の病態像を明らかにする。また、同拘縮モデルに対して関節可動域運動、ストレッチを試み、坐骨神経周囲の病的変化に対する治療効果を明らかにするとともに、坐骨神経の滑走が、同部分にて担保されていることを明らかにする。」であり、概ね、この研究計画に準じた研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきたラミニンおよびⅣ型コラーゲンの免疫染色については、内部ポジティブコントロールによる半定量的なアプローチを行ってきたが、今後はより定量性を明らかにするため、蛍光抗体法を用いた検討を試みたい。またこれと同時に、申請時の研究計画に準じて、今後より多くの接着分子の検討を行うことにより、坐骨神経と神経周膜の「密着」の分子病理学的背景を明らかにするとともに、その病的意義のさらなる追求と、理学療法学的治療手技についての新たなエビデンスを得たい。
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Causes of Carryover |
実交付額を鑑み、申請書にて予定していたハードウェアの「顕微鏡デジタルカメラ」の更新を保留することとした、またこれにより高価な抗体を複数購入可能となり、より有効に実験を行うことが可能となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も計画初年度と同等以上の予算を確保することにより、同様にして有効な実験を引き続け継続することが可能となったため、引き続き必要な抗体の購入と、新たな実験手技としての蛍光抗体法について検討する。
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