2017 Fiscal Year Research-status Report
セイバーメトリクスによる野球投手の評価指標のバイオメカニクス的検証
Project/Area Number |
15K01566
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
神事 努 國學院大學, 人間開発学部, 准教授 (20387616)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セイバーメトリクス / バイオメカニクス / ピッチング / ボールスピン / リリースポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
セイバーメトリクス(野球選手評価数理理論)と呼ばれる統計量によって、野球の投手の能力を評価することが一般的になりつつある。 野球規則の1.05にもあるように、野球の試合の目的は相手より多くの得点を上げて勝つことである。このことから、攻撃はどうやって得点を奪い、守備は失点を防ぐのかという観点がセイバーメトリクスの原点になっている。投手に関して言えば、3アウトを生み出すまでにできるだけ得点を与えないほうが良い。よって、ほぼ100%アウトになる奪三振が多い投手は評価が高くなる。また、フライよりもゴロを打たせたほうがアウトになりやすく、長打になりにくいことがわかってきている。 これら統計量は、投手の能力を総合的に評価できる一方で、投球されたボールやフォームに関する力学量とどのように関連しているのか明らかになっていない。そこで、セイバーメトリクスで扱う統計量が、投球されたボールの速度や回転、フォームなどのバイオメカニクス的変量とどのような関係があるのかを検証することを本研究の目的とした。 本研究では、試合中のボールの初速度、回転速度、リリース位置、投球軌跡等を自動で計測できるシステム(TrackMan Baseball、以下Trackman)によって取得されたデータと、セイバーメトリクスとの関連性を検証している。しかしながら、このシステムで取得できるデータには、いくつかの項目において系統誤差が含まれていることが明らかになった。また、球種のタグ付けに関しては、人が判定しており、球種判定の妥当性が低いことが明らかになった。系統誤差の補正や、球種判定の自動化のようなデータのクレンジング作業をこれまで行ってきた。また、これら作業に影響を受けない部分のデータを用いて、打球の傾向(打球飛距離、打球速度、打球角度)と投球されたボールの到達地点の関連性を調べ、日本野球科学研究会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、試合中のボールの初速度、回転速度、リリース位置、投球軌跡等を自動で計測できるTrackmanによってデータを取得している。しかしながら、このシステムで取得できるデータには、いくつかの項目において系統誤差が含まれていることが明らかになった。また、球種のタグ付けに関しては、人が判定しており、球種判定の妥当性が低いことが明らかになった。このような系統誤差の補正や、球種判定の自動化のようなデータのクレンジング作業に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究から、打球の傾向(打球飛距離、打球速度、打球角度)と投球されたボールの到達地点には強い関連性を見出すことができた。ボールの速度や回転のような変量だけでなく、どこに到達するのかも、セイバーメトリクスとの関連を考える上で考慮しなくてはならない。今後は、空振りや、ゴロ、フライとなったイベントについて焦点をあて、どのような球速、回転速度、回転軸の角度、リリース位置、到達位置で打者を打ち取っているのかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本研究では、試合中のボールの初速度、回転速度、リリース位置、投球軌跡等を自動で計測できるシステムによってデータを取得している。しかしながら、このシステムで取得できるデータには、いくつかの項目において系統誤差が含まれていることが明らかになった。また、球種のタグ付けに関しては、人が判定しており、球種判定の妥当性が低いことが明らかになった。このようなデータのクレンジング作業が発生することは想定外であり、系統誤差の補正や、球種判定の自動化のプログラムを作成するのに時間を要した。これらの理由から、セイバーメトリクスとバイオメカニクス変量の関連づけに関する分析が不十分であった。これらの理由により、学会発表や論文投稿に関する予算が執行されなかった。これらデータクレンジング作業は終了予定であり、今年度はデータの分析及び発表に予算を使う計画である。
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