2015 Fiscal Year Research-status Report
ストレッチングがもたらす糖尿病と動脈硬化症の予防効果の解明
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15K01639
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
永澤 健 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (80390566)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレッチング / 運動療法 / 糖尿病予防 / 血糖値管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
血糖値の上昇抑制に有効な一過性の静的ストレッチングの処方条件について検討した.健常成人女性12名を対象に,糖負荷試験後にストレッチングを15分間実施する条件,30分間実施する条件,座位安静を保持する条件の計3条件を順序無作為に実施した.空腹時から糖負荷120後までの血糖値を測定し,血糖値の変動曲線から血糖上昇曲線下面積を求めた.ストレッチング条件では糖負荷試験30分経過後から,受動的な静的ストレッチングを行った.両方のストレッチング条件の血糖値は,糖負荷試験30分後の血糖値と比較して60分,90分,および120分において有意な低下を認めた(p<0.01).一方,安静条件においては,糖負荷試験90分および120分後においてのみ血糖値が有意な低下を認めた(p<0.01). 血糖上昇曲線下面積は,15分間および30分間のストレッチング条件が安静条件と比較して有意に低値を示した(p<0.05).これらの結果から,糖負荷試験後に上昇した血糖値が受動的な静的ストレッチングよって降下することが示唆され,ストレッチによる伸長刺激が骨格筋の糖の取込み作用を促進させたものと考えられた.また,15分間といった短時間のストレッチ運動でも食後の血糖値上昇の抑制に効果があることが示唆された. さらに,静的ストレッチングが伸長部位の代謝と血管径に及ぼす急性効果について検討した.健常成人女性10名を対象に,10秒および30秒の静的ストレッチングを実施した結果,伸長部位の筋代謝が安静時の1.4倍まで上昇し(p<0.05),さらに静的ストレッチング後に上腕動脈血管径が安静時よりも13%増大した(p<0.01).これらの結果から,静的ストレッチングは伸長部位局所の代謝を亢進させるとともに,血管拡張作用を有することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静的ストレッチングが食後の血糖値に及ぼす一過性の影響について,血糖値の降下に有効な静的ストレッチングの処方条件を探る研究に取り組み,順調に研究計画を遂行できている.また,静的ストレッチングが伸長部位局所の代謝と循環に及ぼす急性効果についての研究を遂行することができ,研究計画はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの静的ストレッチングによる血糖値低下および血液循環亢進の作用に関する研究成果を基にして,本年度は,糖負荷前後に静的ストレッチングを行い、静的ストレッチングが血糖値の上昇を抑制するかどうか調べるとともに,酸化ストレスに及ぼす影響について検討する.これにより静的ストレッチ運動が酸化ストレスを上昇させることなく血糖値の上昇を抑制する作用があるかどうか検証する.また,血管機能の改善に効果的な静的ストレッチングの処方条件を探る.最終年度へ向けて研究計画を推進することで,静的ストレッチングがもたらす糖尿病と動脈硬化症予防効果の解明を目指す.
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Causes of Carryover |
当初計画よりも消耗品費,旅費を抑えることができたため,次年度の使用額が生じることになった.未使用額は次年度に行う追加実験に伴う試薬や消耗品の購入に充てる計画である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主な使用計画として,血液分析用の試薬,血管機能測定の際に必要な心電図用電極,グルコース溶液等の消耗品費,および被験者謝金を計上している.旅費として,学会での成果発表の費用を計上している.
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] 運動と栄養2015
Author(s)
永澤健
Organizer
第14回日本栄養改善学会近畿支部学術総会
Place of Presentation
奈良
Year and Date
2015-12-06 – 2015-12-06
Invited