2015 Fiscal Year Research-status Report
短時間の階段昇降運動の血糖コントロール改善効果に関する検討
Project/Area Number |
15K01711
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 達也 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (00314211)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 運動療法 / 糖尿病 / 食後高血糖 / 自覚的運動強度 / 階段昇降 / 乳酸 / 骨格筋 / インスリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、短時間の階段昇降運動が食後血糖値を急性的に低下させることを検証した。10名の運動禁忌のない2型糖尿病患者を被験者とし、非運動日および運動日を設け、各被験者は両日とも朝食として試験食を摂取した。非運動日は、食後180分まで継続して座位をとり、運動日は食後90分が経過したのち階段昇降運動を実施し,運動終了後,再び食後180分まで座位をとった。階段昇降運動は、1階から2階まで(段数21段)の往復歩行を3回繰り返して1セットとし、30秒の休息をはさんで、4~5セット行った(所要時間8~10分)。昇段速度は各被験者にとって無理なく昇段可能な速度とし降段速度は自由とした。運動終了直後の心拍数と血中乳酸値はこの運動が高強度運動であることを示したが、自覚的運動強度が降段時と休息時に減少し、総合的な自覚運動強度は「中等強度運動」であった。血糖値は、運動前(食後90分)には非運動日と有意差を認めなかったが、運動後(食後120分)は有意に低値を示した(P<0.01)。運動前(食後90分)を基準とした血糖降下面積においても、運動日は有意に高値を示した(P<0.01)。以上の結果は、食後90分に行う短時間の階段昇降運動が、2型糖尿病患者において、急性的な血糖降下作用を持つ可能性を強く示唆するものである。この成果を受け、2型糖尿病患者を対象として、短時間の階段昇降運動を食後に複数回行うことにより、階段昇降運動を1回だけ行うよりも効果的に血糖値を低下させるプログラムの開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように、階段昇降運動の血糖降下作用の検証を2型糖尿病患者において実施できたとともに、その知見に基づいて、より効果的なプログラムの開発に着手していることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
1回の階段昇降運動よりも効果的に食後血糖を低下させる階段昇降運動の手法を明らかにするとともに、その手法を用いて、2型糖尿患者を対象として、中・長期的な血糖コントロールの改善が可能かを検証する。具体的には、被験者に毎食後に階段昇降運動を行ってもらい、対照群として階段昇降運動を行わない群を設けるか、あるいは同一被験者においてクロスオーバー試験として階段昇降運動を行わない期間を設けることで、血糖コントロール指標がどのように変化するかを解析する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に新規購入を予定していた備品(メドトロニック社持続血糖測定器iPro2システムキット1式)と持続血糖測器の消耗品及び血糖・乳酸測定用チップを他の研究者から譲渡されたため新規購入が不要となり次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、効果的に食後血糖を低下させる階段昇降運動の手法を明らかにするとともに、その手法を用いて2型糖尿患者を対象として、中・長期的な血糖コントロールの改善が可能かを検証する予定である。助成金はこれらの研究の実施(試薬、血糖・乳酸測定用チップ、持続血糖測定消耗品、ガラス・プラスチック器具の購入及び外注検査)及び研究成果公表(投稿料、オープンアクセス料)等に使用する予定である。
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