2017 Fiscal Year Research-status Report
短時間の階段昇降運動の血糖コントロール改善効果に関する検討
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15K01711
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 達也 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (00314211)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 運動療法 / 糖尿病 / 食後高血糖 / 自覚的運動強度 / 階段昇降 / 乳酸 / 骨格筋 / 自転車エルゴメーター |
Outline of Annual Research Achievements |
階段昇降運動の急性的血糖降下作用に関する臨床的有用性(優位性)を、糖代謝障害者において自転車運動との比較において検証した。7名の2型糖尿病患者と7名の耐糖能異常者(年齢60.9±11.2歳)に対して、試験食(660Kcal)の摂取後90分から、自転車エルゴメータを用いた定常運動、あるいは階段昇降運動を、運動中の平均心拍数が同程度(約130拍/分)となるように運動強度を設定して、約8分間負荷した。自転車エルゴメータ運動は、アイソパワーエルゴメータを用いて50~65回転/分で実施し、階段昇降運動は1階分(18㎝×21段)の階段を下りて上ることを16回連続で反復した。その結果、食後90分から105分の間の急性的な血糖降下量は、階段昇降運動のほうが有意に大きくなった(階段昇降運動:4.0±0.7mmol/L, 自転車運動:2.7±0.9mmol/L, P<0.05)。また、どちらの運動も行わない場合の血糖降下量を差し引いた実質血糖降下量も、階段昇降運動のほうが有意に大きくなった(階段昇降運動:3.2±0.7mmol/L, 自転車運動:2.0±0.6mmol/L, P<0.01)。血中インスリン濃度には両群間に差はなかった。さらに、階段昇降運動では、酸素消費量が9%高かった一方で、呼吸交換比は有意に低く、また血中乳酸濃度の上昇も有意に小さかった。これらの結果は、同じ心拍数で運動した場合、階段昇降運動が自転車運動に比して、酸素消費量が高いにもかかわらず運動を楽に感じながら、より強力に食後血糖を降下させる作用を持つ可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、階段昇降運動の急性的血糖降下作用に関する有用性を、他の運動種目(自転車運動)と比較して検証し、その成果を雑誌論文として国際的に公表していることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
2型糖尿病患者における階段昇降運動の血糖降下作用について持続血糖モニタリングシステムを用いた連続的な血糖測定によって詳細に検証する。
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Causes of Carryover |
持続血糖モニタリングシステムを用いた検討は、当初の計画では平成29年度に実施する予定であった。しかし、研究を予定していた医療機関において、本研究を担当していたスタッフが転出したため、被験者のリクルート及び研究の遂行が一時的に不可能となり、次年度使用額が生じたものである。平成30年度の研究では、持続血糖モニタリングシステムの稼働に伴う消耗品類や、血液検査の外注、ホルモン・サイトカインのELISAキットの購入、研究成果公表(投稿料、オープンアクセス料)等に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)