2016 Fiscal Year Research-status Report
ろう児への手話を支える身体のエクリチュール性-文化的環境としてのろう保育者の意義
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15K01759
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
西岡 圭子 (西岡けいこ) 香川大学, 教育学部, 教授 (10237670)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ろう幼児教育 / メルロ=ポンティ / 保育環境 / 現象学的記述 / 遊び / 絵本読み聞かせ / 理由の空間 / 身身体のエクリチュール性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園幼稚部に勤務する、二人のろうの保育者、清水由紀江、戸田康之 両氏が、同校のろう・難聴の子どもたちをことばの世界へと導くための貴重な文化的環境であることを参与観察し、現象学的に記述した。清水氏が9月中旬-2月中旬間、産休であった。そのため、その期間は、戸田氏の保育を中心的に観察した。毎月、数日間にわたって、訪問し、その都度、現象学的記述による考察文を届け、その総量は、400字詰め原稿用紙換算で160枚あまりになる。(年度末は、当該年度の科研費を使い切って旅費が出ないために、「出張」ではなく、「研修」として、訪問したが、参観した内容についての考察文は送り続けた。)清水氏の保育に関しては、ろう・難聴児にとって最初の「ことば」である絵画制作を支援する優れた空間的環境構成、戸田氏に関しては、絵本の読み聞かせから発展させる劇ごっこ遊びによる、言語能力の育成に、焦点化して、考察した。その内容については、現在、執筆中の著書「メルロ=ポンティの教育の哲学」(仮題)に収録する。また、メルロ=ポンティ哲学に関して複数の著者で編集する入門書の原稿にも、反映させる。近年、人工内耳の手術を乳幼児期に受けるろう・難聴児が増加しており、それは、両氏が勤務する大宮ろう学園でも同様である。しかし、決して完璧な装置ではない人工内耳の使用を修得していく前提としても、全身体的なコミュニュケーション空間の体験は必須であり、そのための、ろうの保育者の手話能力の活用は必至であることを、両氏の保育実践に参与観察して、確信する次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ろう者である、清水由紀江、戸田康之、両氏の保育観察を計画していたが、清水由紀江氏が、6カ月間の産休をとった。その期間は、戸田康之氏の保育実践に集中して、参与観察した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である29年度には、研究成果を社会に還元することに重点をおく。29年6月25日(日)には、西岡の勤務校である香川大学内を会場として、ろう者の戸田康之氏、と聴者の新井孝昭氏(西岡の科研費研究の研究協力者)による、講演会+ワークショップ(ろう・難聴児の劇ごっこ遊びをはぐくむ絵本の手話語りをアクティブ・ラーニング)を企画している。さらに、西岡個人での学会発表を行い、執筆中の著書の完成をめざす。
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