2015 Fiscal Year Research-status Report
積雪寒冷地域における子供の心的ストレス負荷を考慮した新たな身体活動モデルの構築
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15K01766
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
中島 寿宏 北海道科学大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10611535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 学 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80403765)
森田 憲輝 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10382540)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幼稚園 / 身体活動量 / 積雪寒冷地域 / コミュニケーション / 歩数 / 登園方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では特に積雪寒冷地域における子どもたちの身体活動量低下の原因について,幼稚園児や小学生を対象とした調査を実施した.まず,幼稚園児を対象とした調査では,積雪寒冷期間における一日の身体活動総量に大きく関わると考えられる登園方法についての研究を実施した.分析の結果,徒歩を中心とした身体活動を伴った登園をしている園児の一日の活動量は,バス・自家用車を利用している園児よりも有意に高かった.また,徒歩グループでは午後の活動量が午前中と同様に高く維持されるのに対し,身体活動を伴わない登園方法グループの午後の活動量が午前中と比較して大きく落ち込むことが確認された.このことから,幼稚園児では午前中,もしくは朝の時間帯での身体活動量が午後を含めた一日の身体活動に大きく影響していることが明らかとなった.この調査については,2016年2月発行の「運動とスポーツの科学 第21巻(1)」に掲載(査読あり)されている. また,子どもたち同士の関わり方やコミュニケーションの様子が,身体活動量にも影響を及ぼしていると考えられるため,幼稚園児を対象としたコミュニケーション量の調査を実施した.調査にあたっては,日立製作所が開発し日立ハイテクノロジーズが事業化している「ビジネス顕微鏡」を試験的に導入し,コミュニケーション量の計測を実施している.調査の結果として,周囲とのコミュニケーション量が多い園児ほど歩数が多くなる傾向が確認され,周囲とのつながりと身体活動量とは強く関わりがあることが検証されている.この結果についてはPacific Early Childhood Education Research Associationにおいて,ポスター発表を実施している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,研究連携機関である幼稚園と小学校において順調に調査を進めているところである. 札幌市内の幼稚園2園では,春季・夏季・秋季・冬季の年4回,園児たちの身体活動量測定,コミュニケーション量測定,インタビュー調査を実施しており,季節や気候による子どもの園内活動についてのデータ収集が進んでいる状況である.また,保護者と子どもを対象とした「家庭でできる運動あそび」についての講習会を実施し,子どもたちが運動をしたくなる環境づくりについての活動を進めている. 札幌市内小学校,石狩市内小学校においては,1~6年生での年2回の身体発育データを測定し,夏季と冬季での身体発育状況の調査を進めている.この調査では,肥満児や低体力時ほど冬季に体重増加率が低く,逆に夏季では体重増加率が高いという結果が得られている.これにより,従来より考えられていた肥満や低体力が冬季の身体活動量の低下であるということに対して,夏季の身体活動量の関わりという点も考慮しなければならないことが示唆された.また,肥満児・低体力児ほど夏季と冬季での体重増加率の増減幅が小さいことから,年間を通して屋外での活動に消極的である傾向が考えられ,肥満・低体力の防止には屋外での身体活動を伴う遊びを促すことが効果が期待できると考えられる.これらの研究結果については,すでに日本発達心理学会での発表を済ませている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では,積雪寒冷地域における子どもたちの身体活動に関わる問題について,季節や気候による影響があることを示唆できる調査となっている.平成28年度については,これまでの調査・分析の結果を,子どもたちに対する観察・インタビュー・質問紙調査などの質的なアプローチを用いて,さらに詳細に分析する予定である.特に,身体活動量の低下と心的ストレスの関わりについては今年度の調査で明らかにしていく計画である. 当初の研究計画から変更が必要となっている点については,子どものストレス指標である.平成27年度においては,研究計画書通りにアミラーゼの測定によるストレス状況調査を実施したが,幼稚園・小学校においては子どもたちの水分補給頻度,タイミング,水分摂取量といった条件を一定にすることが事実上不可能であり,口内アミラーゼ濃度測定によるストレス状況の判断が難しい状況であった.そのため,平成28年度以降は,ストレスについての指標として自律神経バランスの測定によるストレス状況調査を並行して実施する予定である.また,平成27年度にも実施したコミュニケーション量の調査からもストレス状態の評価を行っていく予定である. 平成27年度の調査結果については学会発表などでの公表を進めているが,平成28年度では論文発表でのアウトプットに向けて共同研究者と共に取組を進めているところである.また,平成28年度は連携小学校での子どもへの質問紙調査を実施済みであり,さらに詳細な子どもの実態分析を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
平成27年度では,子どもたちのストレスを図る指標として計画していた口内アミラーゼ濃度の測定について,調査実施上の問題が発生した.幼稚園においてプレテストを実施したところ,子どもたちの生活状況などの実施条件を一定に制限することが不可能であり,口内アミラーゼ濃度によるストレス状況の判断に困難があるということが判明した.口内アミラーゼ濃度は水分補給の頻度,タイミング,量などに大きく影響されることから,幼稚園児の園内生活や小学生の校内生活で測定された数値には誤差が大きくなると推察される.このことから,平成27年度はアミラーゼ濃度測定のためのパッチの購入を見送っている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は自律神経でのストレス状況調査を実施することを予定しており,心拍計の購入や自律神経測定機器(Lifecoreなど)の購入・レンタルを検討している.現在,共同研究者と協議した上で,新たなストレス指標を用いた研究計画の見直しを行い,口内アミラーゼ濃度以外でも子どものストレス状態を把握できると考えている.
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