2016 Fiscal Year Research-status Report
閉ループ電気生理による神経活動ダイナミクスのフィードバック制御
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15K01847
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 淳 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20392061)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経科学 / 生物・生体工学 / 情報工学 / マイクロ・ナノデバイス / 生体生命情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,実時間で多点計測と多点刺激を行う閉ループ電気生理を用いて,特定の脳領域における神経活動ダイナミクスを安定的かつ精緻に制御することのできる新しい方法論を確立することである.そのための準備として,1年目には麻酔下の哺乳類聴覚皮質神経回路における音誘発応答特性を様々な層及びサブ領域において体系的に調べたが,2年目は覚醒自由行動下において聴覚皮質から神経活動を計測し,その文脈依存的な応答特性を解析した. まず,覚醒自由行動下のマウス聴覚野に慢性電極を埋め込み,神経活動を計測した.しかしながら,聴覚応答を計測できる確率が20%程度と低かったため,フラビン蛋白質蛍光イメージング法を利用することで,個体ごとに位置が異なる聴覚皮質の位置を個体ごとに同定した上で慢性電極を埋め込む新しい方法を提案した.本手法を用いると,ほぼ100%で聴覚応答を計測できることを確認した. 次に,慢性電極を埋め込んだマウスを,異なる2つの行動文脈(孤立したalone条件と他個体が存在するsocial条件)において,計測している神経細胞の聴覚応答特性(時間周波数受容野: STRF)を解析した.その結果,alone条件と比べてsocial条件では,特に時間方向により正確に応答する選択性を示すことが明らかとなった. 2年目の研究により,覚醒自由行動下のマウス聴覚皮質から高確率で聴覚応答を計測する方法を新規に確立するとともに,聴覚皮質神経細胞が社会的な行動文脈依存的に聴覚応答特性を変化させることを明らかにした. 最終年度となる3年目では,これらの知見を踏まえて,多点刺激により聴覚皮質神経活動をどのように制御・変容させることができるか試行していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性電極をマウスへ埋め込む前にフラビン蛋白質蛍光イメージングを利用することにより,個体差の大きい聴覚皮質の位置を同定する新手法を確立し,大幅に聴覚応答計測成功率を上昇させることができた.これは,当初の予定以上に進展した項目である.一方,閉ループ電気生理に最適な多点電極の作成については,予定からやや遅れているため,全体として「おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までの研究により,麻酔下および覚醒自由行動下の齧歯類聴覚皮質から聴覚応答を計測する方法を確立するとともに,聴覚皮質におけるサブ領域および層依存的な聴覚応答特性の違いや社会的行動文脈に対する依存性を明らかにしてきた. 最終年度となる3年目では,これらの知見を踏まえて,多点刺激により聴覚皮質神経活動をどのように制御・変容させることができるか試行していく予定である.
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Causes of Carryover |
次年度の4月に執行する案件があるため,次年度使用額が生じている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の4月に執行する案件にて,当初の予定通りの執行額となる.
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Remarks |
北海道大学 大学院情報科学研究科 生命人間情報科学専攻 神経制御工学研究室 ホームページ http://tt-lab.ist.hokudai.ac.jp/
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