2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Political Attitudes and Behaviors, and Ethnic Identities among Salvadoran and Mexican Residents in the U.S.A.
Project/Area Number |
15K01895
|
Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
中川 正紀 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (70295880)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エスニック集団間の比較 / トランスナショナルな関係 / 国際労働力移動 / アイデンティティ / 定量的研究 / グローバル化と国民主権 / 在外国民の本国政治参加 / 国籍と国民意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年8月下旬の10日間に、在ロサンゼルス、メキシコ合衆国領事館にてメキシコ系住民対象のアンケート調査を連携研究者と共同で実施し、約600部の精度のかなり高い回答データを得た。1980年代から米国で増加したエルサルバドル系住民と対比して、19世紀半ばから在米の歴史を持つメキシコ系住民の特徴について指摘できた点を以下に挙げる。①米国生まれも多く、三世・四世も見られ、制度上、二重国籍のみならず米国籍のみの若者も多い、②なかでも、二世の若者には、二重国籍、米国籍に関係なく、自らを「メキシコ人」あるいは「メキシコ系アメリカ人」と考え、メキシコのルーツに誇りを持つ人が多い、③在留資格のないメキシコ人も多数おり、多くが渡米後の帰国・渡航の経験を持つ。定期的に米国・本国間を行き来していたり、いったん本国に帰国したが生活が困難なため再び米国に戻ったりするなど、米墨国境線をまたぐ「トランスナショナル」な移動が日常化している印象である。また、元々米国南西部は米国ではなく、自分達の土地であって、後から力で捻じ曲げられた「国境線」など意に介さないというメキシコ人としての誇りや信念が感じられる。 これらのメキシコ系の特徴は、出自が一つの国境線をはさんで陸続きの国か三つの国境線を越えなければたどり着けない国かの違いからくるものともいえる。それでも、ラティーノ移民の中で比較的新しいエルサルバドル系社会でも、米国生まれの世代の比率が今後高まって行くことが予想される。メキシコ系社会の現状は、ある意味、エルサルバドル系社会の将来を大まかに示していることは間違いなかろう。 メキシコ系移民との比較におけるエルサルバドル系移民女性にとっての米国市民権の意義について2019年3月発刊の紀要論文で扱ったが、2019年度調査回答データの分析に基づいた両集団の特徴および今後の行方に関する論考は、随時、公表していきたい。
|