2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01911
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 文香 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10367667)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 軍事的男性性 / ジェンダー / 自衛隊 / 軍事組織 / 戦後日本社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、文献研究として、公式文献や記念誌等の基礎資料や自衛隊史を読みこむことで、戦後の自衛隊をとりまく日本社会の変化の把握につとめた。また、英文ジャーナルを中心に「軍事的男性性」を分析概念とした研究のサーベイを行い、理論枠組みを精緻化していくための予備的作業を行った。特に、Mary Louise Roberts, What Soldiers Do: Sex and the American GI in World War II France(Chicago University Press, 2013)については、監訳者として『兵士とセックス ―第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか?』(明石書店, 2015年)を刊行し、『女性情報』や立命館大学におけるシンポジウム「戦争と性暴力の比較史へ向けて」での報告を通じて広く紹介した。 調査としては、現職・退職男性自衛官への聞きとりを重ね、変容する日本社会の文脈において異なる世代の彼らが自衛隊という軍事組織でどのような経験を有し、それをどのように受け止めているのかを把握することにつとめた。 また、平成27年9月には国際ジェンダー学会シンポジウム「『女性活用』と女性の動員」の企画・運営を行い、軍事領域を含めた日本の女性活用の状況について考察を深め、平成28年3月にはInternational Studies Association の年次大会への参加を通じて、「軍事的男性性」概念を用いた軍事領域のジェンダー研究を遂行している各国の研究者との意見交換を行った。 これらの成果は、教科書『ジェンダーで学ぶ社会学』の担当章に反映させると共に、共著論文「国際平和活動におけるジェンダー主流化」として『国際ジェンダー学会誌』に掲載し、ジェンダー史学会シンポジウムでの報告「軍事化される『平等』と『多様性』」にも活かすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、文献調査とインタビュー調査を用いたアプローチを行い、当初計画においては平成27年度は公式文献や記念誌等の基礎資料および自衛隊史の先行研究を重点的に読みこむ文献調査のみを行う予定であった。しかしながら、研究代表者自身が既に培ってきたネットワークに加え、科学研究費による共同研究「大規模災害時等における自衛官家族の社会的支援に関する総合的研究」(研究代表者・河野仁)を通じて、研究対象者とのラポール形成が思いのほか順調にすすんだため、平成28年度の研究費を一部前倒し、次年度以降に実施予定だったインタビュー調査を先行して行うことができた。同時に並行して、分析概念として「軍事的男性性」を用いた先行研究の収集を進め、順次読み進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降も、引き続き、文献調査およびインタビュー調査を遂行し、現職・退職男性自衛官の経験の把握につとめる。平行して、先行研究の読みこみと「軍事的男性性」概念を用いた理論枠組みの検討を続けていく。 文献調査では、男性自衛官の経験の把握のために、防衛研究所戦史部によるオーラル・ヒストリーをはじめ、ジャーナリストによる自衛官へのインタビューや取材記録、元自衛官による回顧録等の著作を可能な限り網羅的に収集し、読みこみをすすめる。 インタビュー調査では、トランスクリプトの作成・検討を通じて、時代・世代と地域の差異に注目しながら「軍事的男性性」概念を中心としたジェンダーの視座からの分析・考察を進めていく。 研究の成果として、国際ジェンダー学会、日本女性学会、戦争社会学研究会等で中間報告を予定している。平成28年度については『朝日新聞』2016年4月27日夕刊、『ジェンダー史学』第12号、『女たちの21世紀』第86号への寄稿依頼があり、9月にはオーラルヒストリー学会シンポジウム「戦時性暴力とオーラルヒストリー」での登壇も予定しているため、これらを通じて研究成果の一部を広く紹介していくつもりである。
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Causes of Carryover |
誤差である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画に変更はない。
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Research Products
(6 results)