2020 Fiscal Year Research-status Report
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15K01925
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
千田 有紀 武蔵大学, 社会学部, 教授 (70323730)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 母性 / フェミニズム / エコロジー / 日米比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エコロジーとフェミニズムの関係を問い直し、理論的に深化させることを目的とし、カリフォルニアで女性が多くかかわっているエコロジー運動が、何を課題とし、母性や女性、エコロジーや科学技術についての思想を紡ぎ、どのような倫理を作りあげているかを比較分析することを目標とするものであった。 その際に、アメリカ、とくにカリフォルニアで行われている反原子力運動を取りあげ、母性、平和、エコロジーの関係について、改めてジェンダーの視点から理論的・実践的に考察することを目指している。また、反原子力運動がどのように組織されているか、さらに実際にたずさわっているメンバーのライフヒストリーを聞きとることによって、反原発運動がどのように個々人の人生に位置づけられ、意味づけられているのかについて、考察し、最終的には、日米社会の比較研究を行う予定である。 今年度は、新型コロナウィルスの影響によって、アメリカへ渡航することができなかった。したがって、カリフォルニアでの聞き取り調査は不可能であった。 そのため、今年度はフェミニズム理論において、母性や差異や身体というものがどのように位置づけられてきたのか、第一波フェミニズムと第二波フェミニズム、そして近年のポストフェミニズムの言説を検討するための理論的な基礎作業を行った。近代社会の成立とともに女性の身体の「差異」をその主張の根拠とした第一波フェミニズムに対し、第二波フェミニズムにおいては、近代社会の行き詰まりを告発するとともに、その構成された社会的なジェンダーを批判しつつ、女性の身体はその反撃する根拠となる何者であるかと考えられた。ポストフェミニズムにおいては、平等規範から多様性規範へと遷移したことを前提として、身体的差異は、差別の根拠ではなく、積極的に打ち出されるものとなった。これらの成果は、来年度にまとめて公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で、まったく海外渡航できないため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスが収束すれば、先延ばしにしてきたカリフォルニアでのフィールドワークを進める。もしもそれが不可能であれば、代替手段を模索して、これまでのフィールドワークの成果と、理論的な成果についてまとめざるを得ない。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、現地調査が行えず、未使用額が生じた。次年度請求額と合わせ、2021年度以降の現地調査、あるいは実施ができないときには、資料購入費の一部として使用する計画である。
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