2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K01955
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上村 隆広 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (70244621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花村 周寛 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 准教授 (00420430)
尾家 建生 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 客員研究員 (30441124)
原 一樹 神戸山手大学, 現代社会学部, 准教授 (90454785)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高野山 / 外国人旅行者 / ニューツーリズム / 観光動機 / ナラティヴ / 場所 / 聖性 / 聖地巡礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
高野山を訪れる外国人旅行者に対する実証研究に先立ち、初年度はまず、高野山を訪れる外国人観光客の現象をニューツーリズムの一環と仮定し、その「観光動機」、「物語の存在構造」、「場所のゼマンティク」、「聖地性」等に関する理論的考察をおこなった。高野山観光に関する日本語・英語・仏語文献や、現地で入手したパンフレットの分析、および現地関係者への予備的インタビューを通じて得られた情報を基に、共同研究者間での認識の共有を図りつつ、それぞれのサブテーマとの関連づけを確認した。 ニューツーリズムにおいては様々な社会的・文化的概念が観光と結びつき、新しい観光形態がこれまで見られてきた。高野山への外国人観光客は従来のカテゴリーから見ると宗教ツーリズムと捉えることができる。彼らの観光動機は必ずしも信仰や救いを求めることにあるのではなく、仏教聖地で日本文化を体験するために高野山を選択していると思われる。現地関係者によると、高野山観光において外国人観光客の多くはブログ情報により旅行決定をしていると見られるが、宿坊での仏教体験や奥の院の神秘的雰囲気の体験は比較的安易に共有できる文化体験として体験されている。こうした観察と考察は次年度のアンケート調査を行う上で、観光動機についての一つの仮説とすることができる。 一方において、日本人観光客と外国人観光客では観光地を巡る「マスターナラティブ」の下位要素に相違が存在する点が明らかとなった。旅行口コミサイトの分析からは「マスターナラティブ」を強化する言説の多さ、観光者による観光体験に関する意味構築の多様性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎文献調査、旅行口コミサイトや現地で入手したパンフレットの分析を通じて高野山を訪れる外国人の旅行前の情報・知識の概要が解明された。また、高野町役場、外国人向けガイドツアー実施NPO、外国人僧侶へのヒアリングから、外国人訪問者に対して高野山がどのような「物語」や「意味」を提供しているかに関する予備的理解が獲得され、調査票調査に向けた基礎的情報が一定程度獲得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
高野山を訪れる外国人旅行者の声を直接収集・分析する作業に取り組む。具体的には、外国人向けガイドツアーでの参与観察、ガイドツアー参加者・宿坊宿泊者・カフェやゲストハウスに滞在者への調査票調査およびヒアリング調査を予定している。また、帰国後一定期間を経た外国人観光客の声を収集する仕組みも今年度~来年度に構築する予定である。 これと並行して、前年度に引き続き、文献レビューを通じて先行研究との接点を探りつつ、ニューツーリズムの多様化のなかでの宗教ツーリズム、観光体験とナラティヴ、場所のゼマンティク等に関する理論的考察を深める。
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Causes of Carryover |
物品購入の際に想定金額を若干下回る納入価格が生じたものの、調査出張の費用としては金額不足であったため、残金となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地における調査票調査およびインタビュー調査のデータ整理と結果分析を充実させるための費用に充当する。
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Research Products
(5 results)