2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01955
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上村 隆広 大阪府立大学, 経済学研究科, 教授 (70244621)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花村 周寛 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 准教授 (00420430)
尾家 建生 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 客員研究員 (30441124)
原 一樹 神戸山手大学, 現代社会学部, 准教授 (90454785)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 高野山来訪外国人 / 観光体験 / 場所性 / 観光動機 / 物語行為 / 聖地 / ブランディング / 聖性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の研究計画通り高野山における外国人観光客のアンケート調査によるデーター収集を実施し、その一部の分析を行った。概要は次の通りである。 1)調査期間:2016年5月20日~6月20日 2)場所:高野町内宿坊「恵光院」3)調査方法:恵光院への業務委託実施。宿坊来訪・滞在の外国人を対象に調査票(英文)への配布・回収。4)調査票体裁:A4版4ページ。質問項目:旅程3項目、高野山滞在中の体験等9項目、属性7項目、コメント欄 5)回数標本数:220 上村は高野山の場所性をめぐる意味論についての理論研究を継続する一方、上記調査において外国人訪問者が高野山内のランドスケープやスポットの印象をどのように表現するかについて自由記述項目を設定しサンプルを収集した。尾家は、上記サンプルの一部を利用して観光動機と観光体験の項目を分析し、高野山の聖地観光としてのデスティネーション特性と、そこを訪れる外国人訪問者の動機と体験の特性の一端を明らかにした。花村は、上記実査のデータを参照しつつ、高野山とは異なる文化圏の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを対象に聖性のブランディングについて歴史的に考察し、時間をかけて聖性が醸成されていく中で、各時代において聖地の運営主体によって聖性が演出されてきたという経緯について考察を行った。原は、観光体験と「物語」との関わりについて、「物語行為の存在様態」の解明に向けた準備的作業を進めた。具体的には、高野山の宿坊の中でも特に外国人観光客に人気の高い宿坊の実施する外国人向けの「奥之院ナイトツアー」への参与観察により、観光客が「オン・ツアー」の段階で得られる物語を把握すると同時に、上記調査において高野山への事前期待の内実や、高野山観光での経験を観光客がどう物語るかに関するサンプルを収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高野山を訪れる外国人観光客についての複数回の調査を計画していたが、適切な調査協力者を得ることにいささか手間取ったことと時間的制約とによって、宿坊1軒における220サンプルの収集にとどまった。ただし、尾家と原が現地において新たな調査対象の選定について現地関係者からの支援の可能性を取り付けられたため、次年度においてそれに基づく調査を実施する見通しを得ることができた。また、原による「物語がどう語られるか」という観点からのホスト側及びゲスト側に対する参与観察や、花村によるキリスト教圏の来訪者にとっての聖地聖性の意味についての歴史的考察によって、次年度の調査と分析に関する基本的方向性を案出することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、実査計画の若干の遅滞を挽回し、先の調査から得られた外国人来訪者・観光客のプロファイルを手掛かりとして、来訪者に対するインタビュー調査および、来訪者をもてなすホスト側の複数の当事者に対するインタビュー調査およびツアー参加等を試みて、より厚い記述の可能なデータを収集する。またそれらのデータ分析を通じて得られた知見に対する理論的考察を深める。 (上村)高野山の場所性に関する理論的考察のまとめをおこなう。(尾家)日本の仏教聖地における観光体験の全体像を描くとともに、その体験がスピリチュアル・ツーリズムと呼ばれる現象どのように関係するかを解明する。例えば、山岳宗教(修験道)を基にした羽黒山における外国人観光客の行動と比較をすることにより、外国人が憧れる日本文化の本質を探る。(花村)観光客も含めた異なる宗教や文化を共有する人々にとって、共通して感じられる場所の聖性について考察を深めるべく、他の文化圏の聖地についても引き続き調査を行う。(原)観光体験と「物語」との関わりの解明という課題について、これまでに収集した資料に加え、ガイドツアー参加者・宿坊宿泊者・カフェやゲストハウスに滞留する客へのヒアリング調査などを調査し、「物語の存在構造」と「物語行為の存在様態」の両面から、成果を取りまとめる。
|
Causes of Carryover |
調査予定対象であった高野山宿坊のうち、実際に調査票の配布・回収を実施できたケースが1件にとどまったため、調査関係費用が縮小した一方、関係図書・資料類の収集にかかる費用が増大したため、費目間の融通をした結果、予定した以上の残額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に実施できなかった現地調査の再計画と実施、分析作業のためにこの残額を充填する。
|
Research Products
(3 results)