2015 Fiscal Year Research-status Report
21世紀の高齢化社会における岐阜県高山市の福祉観光都市政策の評価と今後の展望
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15K01971
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
伊藤 薫 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 教授 (10308679)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高山市総合計画 / 住みよいまちは行きよいまち / 福祉観光都市 / バリアフリー観光 / 観光客の高齢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の準備として、高山市の総合計画で「福祉観光都市」「バリアフリー」がいつ使われたかを検討し、また観光客の男女・年齢別構造という基本的な分析を行った。 (1)総合計画による岐阜県高山市の福祉観光都市政策の変遷:①日本中小企業学会2015年度第1回中部部会(2015年5月30日)で報告、②Review of Economics and Information Studies(岐阜聖徳学園大学経済情報学部紀要)、Vol.16、No.1・2、pp.7-32、2015.9で発表。 総合計画は「市政の大方針を市が表明したもの」である。高山市では、1969年の第1次総合計画が最初である。2001年策定の第6次総合計画<後期>において、「バリアフリーのまちづくり」「福祉観光都市」が現れ、これは日本の地方自治体の総合計画における早期例と思われる。合併後(2005年策定)の第7次総合計画では、「住みよいまちは 行きよいまち」と優れたまちづくりの基本理念が定められた。以降、ユニバーサルデザインが優勢となった。 (2)男女・年齢別観光客の特徴とその推移-全国調査と高山市観光統計による分析-:③Review of Economics and Information Studies(岐阜聖徳学園大学経済情報学部紀要)、Vol.16、No.3・4、pp.41-62、2016.3で発表。 旧・高山市の観光客入込み者数を男女・年齢別にみると、女の20代の構成比は1990年代に全国の年齢構造に比較して大幅に高かったが、2000年代に入って低下したのもののほぼ年齢構造と同じである。男の50歳以上の構成比は年齢構造に比較して大幅に低かったが、2000年代に入って年齢構造に比較して大幅に増加した。驚いたことに、高山市の観光客は、若い女性優位型から、高年齢男性優位型に変化してきたことが判明した。高齢化社会の進展に伴って、観光客の高齢化が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究においては、基礎的な準備を行った。その研究成果は【研究実績の概要】で述べたとおりであるが、この成果を生み出す過程で、高山市の現地調査を行い、今後のための多数の知見を得ている。 高山市においては、高山陣屋での車いす貸し出し件数の経年データが存在していることが分かった。また平成27年度末から、「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」型の障がい者・高齢観光客の誘致を開始すると聞いた。今後のこれらの実態調査と観光客誘致の成果を調べる必要がある。しかし飛騨地域や美濃地域の他の市町村に広まっているとは思えない。 高山市の福祉観光都市政策を評価するのに必要な「比較対照群」を探したところ、隣県の三重県で「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」が2001年度から活発に活動を継続していることが分かった。そこで、伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの活動と、三重県、伊勢市、鳥羽市、志摩市の予備的な調査を行って、有益な知見を得た。 三重県の状況を調査する過程で、「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」が発足した2001年度より前の1990年代から三重県庁がバリアフリー政策やバリアフリー観光に力を入れてきたことが分かってきた。そこで1990年代の三重県庁や市町村の取り組みの調査が必要になってきた。また伊勢神宮の車いす貸し出し件数の長期データが存在しており、驚いた。 高山市の「福祉観光都市政策」の取り組みと伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの取り組みは、いずれも観光庁のホームページに多数現れる日本の代表的な取り組みである。有難いことに、関連する他地域の取り組みについて基礎的な資料を入手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究は、主に以下の研究項目で進めたい。 研究1:高山市実態調査の継続実施。テーマは、市内の観光施設での車いす貸し出し件数など基礎的なデータ収集、市役所や観光事業所での実情のヒアリング、「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」型の障がい者・高齢観光客の誘致の実施状況などである。 研究2:三重県庁、伊勢市、鳥羽市の観光計画、総合計画において「福祉観光都市」「バリアフリー観光」がいつ頃から現れたかの文献調査。三重県庁の取り組みは、どうも1990年代から始まっているようであり、既に四半世紀を経ている可能性があるので、できるだけ早期に当時の事情を知っている職員に取材をしたい。また市の総合計画でバリアフリー観光がどのように取り扱われてきたかは、高山市と比較する上で有用・重要である。 研究3:「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」型の他地域のセンターの実例調査。センター理事長にお聞きしたところ、沖縄県と佐賀・嬉野温泉の取り組みが進んでいるとのことであった。他地域の実例を調査することで、本研究を全日本の広がりをもったものに展開できる可能性を感じている。 どんな研究の場合でも、思わぬ進展があるものである。本研究の平成27年度においては「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」型の障がい者・高齢者の観光客誘致がそうであった。これを知ったのは、観光庁取材調査であり、現在のような研究テーマにおいては、現地・現場での取材・調査の重要性を実感している。今年度も鋭意研究を進めてゆきたい。
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Causes of Carryover |
出張が計画通りに実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に出張を実施する。
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Research Products
(3 results)