2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K01995
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
西村 正秀 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20452229)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 知覚 / 時間経験 / 運動知覚 / 認知的侵入可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、研究実施計画に記した課題(1)の「運動知覚の認知的侵入可能性」について議論の修正を行った。運動知覚の認知的侵入可能性を論じる際に主として参照されてきたのは、仮現運動の知覚に関する経験科学の成果である。前年度に、仮現運動の知覚が認知的に侵入可能であることを支持する従来の議論を批判したが、その後いくつかの問題点が見つかり、以下の修正を行った。(1)知覚に対するトップダウンの影響があっても認知的侵入可能性が含意されないことを明示した。(2)認知的侵入可能性の定義をより明確化した。(3)D. Stokesによる認知的侵入可能性の「帰結主義」に対して、(i)帰結主義は恣意的であること、(ii)帰結主義だと顕在的注意によるトリヴィアルな事例も認知的に侵入可能なケースと見なされてしまうこと、という二つの批判を新たに挙げた。 以上の修正が正しければ、運動知覚については認知的侵入可能性は必ずしも認められる必要はないという主張が、より説得力のある仕方で提示されたことになる。これは今後、本研究において知覚内容の時間的性質を過去把持モデルに焦点を合わせて分析・検討する際に参照すべき事柄となる。なお、以上の成果は京都現代哲学コロキアム第14回例会で口頭発表された。またそれを論文にしたものは、雑誌『彦根論叢』に掲載予定である。 研究実施計画に記した課題(2)「見かけの現在概念の分析」については、現在の過去把持モデルの起点となっているE. Husserlの理論に焦点を合わせて、過去把持と未来予持という知覚経験の時間的延長を担う要素が持つ性質の分析に着手した段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
育児のため大幅な遅れが生じている。特に、本年度に行う予定であった本研究の課題(2)「見かけの現在概念の分析」については、Husserlの過去把持モデルの検討に着手した段階である。なお、大学については、2016年11月2日から2017年9月30日まで育児休業を取得している。また、本科研費については、2017年3月1日から2018年3月31日まで育児休業により中断をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、育児休業終了後に2年の期間(平成30年4月1日から平成32年3月31日)で行う。平成30年度は、研究実施計画に記した課題(2)「見かけの現在概念の分析」を行い、それが終了すれば、課題(3)「通時的な知覚の群化に関する近年のゲシュタルト心理学の検討」を開始する。課題(2)については、最初に見かけの現在が過去把持モデルにおいて元来どのような構造を持つものとして理解されてきたのかを、主にHusserlの理論を中心として明らかにする。次に、近年の過去把持モデルをR. Grushによる一連の著作を中心として批判的に考察し、見かけの現在が持つ構造を、特に未来予持が持つ性格の分析に焦点を合わせながら明らかにする。課題(3)については、通時的な知覚の群化(特に仮現運動)に関する近年の研究をこれまで本研究で扱ってきたよりも広範に取り上げ、群化が生じる条件、群化と認知的要素の関係、群化と見かけの現在の関係を検討する。平成31年度は、課題(3)の検討を継続して行い完成させる。 研究方法は、文献研究を中心とし、海外の研究者との研究打ち合わせを適宜行う。
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Causes of Carryover |
育児のために研究が遅れた。特に、今年度に計画していた海外の研究者との研究打ち合わせができなかったために、国外旅費に割り当てていた分が繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本科研費による研究は育休により中断し、平成30年4月1日から再開予定である。平成30年度に請求する助成金は200,000円であり、次年度使用額と合わせると466,057円となる。平成30年度は、平成28年度にできなかった海外の研究者との研究打ち合わせを行いたい。次年度使用額は主にその旅費として使用する。平成30年度に請求する助成金は、物品費(図書購入)と国内の旅費として使用する予定である。
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