2018 Fiscal Year Annual Research Report
An integral research on the philosophy of Tanabe Hajime with a dynamic and multifaceted approach and its development through the international collaborations
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15K01996
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (20303795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 田辺哲学 / 京都学派の哲学 / 質料的現象学 / 懺悔道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の予定よりも一年延長して研究を行ったが、その主たる目的は、仏訳作業を進めてきた田辺元のハイデガー論3編について、翻訳の精度を高めると同時に、注釈の作成に役立てるため、いくつかの調査研究を行うことにあった。具体的には、京都大学と群馬大学の田辺文庫の書き込み入りの貴重書やその他の資料を網羅的に調査するとともに、法政大学の三木清文庫なども活用して、田辺が論文執筆の際に用いた文献を三木がどのように評価・受容しているかも調べてみた。そうした調査を踏まえて田辺の論考を読み直す作業によって、仏訳は無事完了することができた。語学的な点検も経た上で、できるだけ早く刊行したいと考えている。
また、こうした作業を通して、副次的な効果として、田辺哲学や京都学派の哲学全体についての新たな解釈可能性を見出すことができた。一つには、田辺や西田の現象学やハイデガーへの批判をその質料論と連関づけて、独自の質料的現象学の可能性へと繋げていく道である。これについては、2018年10月にベルギーのルーヴァンカトリック大学で行った講演で、その成果の一端を示しておいた。もう一つは、『懺悔道としての哲学』での田辺哲学の懺悔道的転回を、その宗教哲学の奇妙な体制を解き明かすという形で解釈し直す試みである。この試みに際しても、田辺文庫での田辺の書き込み調査から得た知見が大変役に立った。これについては、共編者として関わっている田辺哲学の論集への掲載論文として発表する予定である。
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