2016 Fiscal Year Research-status Report
人間の「脆さ」に着目した状況依存的かつ相互依存的な行為者概念の学際的研究
Project/Area Number |
15K02010
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
早川 正祐 三重県立看護大学, 看護学部, 准教授 (60587765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 聖一 立正大学, 文学部, 准教授 (00503864)
古田 徹也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00710394)
吉川 孝 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20453219)
八重樫 徹 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特任研究員 (20748884)
木村 正人 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (80409599)
川瀬 和也 宮崎公立大学, 人文学部, 助教 (90738022)
池田 喬 明治大学, 文学部, 専任准教授 (70588839)
筒井 晴香 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90760489)
萬屋 博喜 広島工業大学, 環境学部, 助教 (00726664)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脆さ / ケア / 認識をめぐる責任 / 感情 / 価値 / 受容性 / 関係的な自律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の行為者理論において見落とされてきた、人間の「脆(もろ)さ」(vulnerability)に着目することにより、これまで個人主義的に捉えられてきた行為者概念を、より相互依存的・状況依存的なものとして捉え直すことを目的とする。平成28年度は、とくに「自分自身の脆さや他者の脆さにどう向き合い応答していくのか」という脆さへの応答性の観点から、主として以下の三つの点で、研究を発展させた。 (1)他者の混沌とした苦しみ(とりわけ病苦)に対するケアにおいて、私たちの「身体的な脆さ」がどう複雑に作用するのかを考察した。とりわけ、私たちの身体的な脆さが、他者の苦しみに対する認知的な逃避に結びついていることを指摘した。そのうえで、ケアにおける「認識をめぐる責任」について、現代の社会的認識論を参照しつつ、認識上の摩擦という観点から論じた。 (2)人間の反省性が(一定の仕方で)協働的な形をとることによって、より適切に機能する点を論じた。とりわけ、自らと見解を異にする他者からの異議申し立てに対しては、心理的な防衛機制がしばしば作動することで、それについての認知が歪んでしまうこと――認知的な脆さ――を指摘した。このことを踏まえ、認知的な支援をする、さらに別の他者への依存があってはじめて、批判的な反省性がきちんと機能するという点を示した。 (3)フェミニスト倫理学における関係的な自律論について批判的に検討し、自己統御の困難さについて踏み込んだ分析をした。 (4)フッサール、ハイデガー、レヴィナス等における、脆さに関連する諸考察について分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脆さについての研究成果を国際ワークショップ等で発表し、論文にまとめて発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を、引き続き学会、論文等で積極的に発表していく。英語での発信にも引き続き力を入れる。
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Causes of Carryover |
物品費が当初の予定より少なかったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脆さ(vulnerability)に関連する文献を、分野横断的に幅広く購入し、その内容を検討していく。
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Research Products
(15 results)