2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02022
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 彰 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (80535097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 玲子 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70272771)
DUMOUCHEL PAUL 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (80388107)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分配的正義 / 政治哲学 / 経済哲学 / 社会哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、平成27年度の研究をふまえて、「平常時」から(部分的にせよ)かけ離れたカタストロフィ後の世界において、分配的正義を支える価値や理念がいかなる身分を有するのかについて精査し、そのうえでカタストロフィ後の世界に適用可能な分配的正義論の価値公正や適用順序についての検討を行った。本研究プロジェクトでは、政治哲学パート(研究代表者である井上彰が担当)、経済哲学パート(研究分担者の後藤玲子が担当)、そして社会哲学パート(研究分担者のPaul Dumouchelが担当)に分けて研究を進めているが、それぞれの専門を生かしながら、いかなる規範的概念や理想的観点が、ときにあからさまな不平等がみられるカタストロフィ後の世界で求められる分配理念に寄与するかについて、明らかにすることができた。 井上彰(政治哲学パート)は、政治哲学の今日的論争をリードする運の平等論について、その根幹を成す正義がいかなる価値として成立するかを他の理論的立場と比較分析するかたちで批判的に検討を行った。後藤玲子(経済哲学パート)は、すでに有力な分配理念として成立しているケイパビリティを軸に、カタストロフィ後に問題となる多様性や障害者への対応、さらにはその目的基底性が人びとの権利をどのように基礎づけるのかについての検討を進めた。Paul Dumouchel(社会哲学パート)は、国民国家の特性やロボット倫理の問題をふまえて、カタストロフィ後の世界における正義やその関連概念の位置づけについての検討を行った。 3者はその共同研究の成果を発表すべく、2017年1月14日に立命館大学衣笠キャンパスにおいて「不平等とカタストロフィ」をテーマにした国際カンファレンスを開催し、カタストロフィ後に深刻化する不平等に代表される様々な倫理的問題について、分野横断的に議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、研究実施計画で示した通り、分配的正義に関わる価値や理念がカタストロフィ後の世界でどのような身分を有するのかについての検討を軸に、政治哲学パート(井上彰)、経済哲学パート(後藤玲子)、そして社会哲学パート(Paul Dumouchel)で各担当者が研究を進める計画であった。そして、ほぼその当初の計画通りの研究プロジェクトを遂行した。 具体的には、第1に、それぞれの専門を生かしてカタストロフィの分配的正義論を支える価値や理念についての検討を行い、その成果を各自が国内外のカンファレンスや研究ワークショップ、そして国際学術誌にて発表したことがあげられる。第2に、そうした各自の成果を共同の研究成果に昇華させるべく、立命館大学衣笠キャンパスにて国際カンファレンス「不平等とカタストロフィ」を開催し、国内外から著名な研究者を招いて活発な議論を行ったことがあげられる。 以上は当初の研究計画書で示した通りの計画内容であり、それゆえ平成28年度は研究の進捗としてはおおむね順調であると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成27年度および平成28年度の研究成果をふまえて、カタストロフィの分配的正義論を提出し、そのうえでわが国の復興のあり方や被災地内あるいは被災地内と外の格差問題への応答を試みる。 具体的には、政治哲学パート(井上彰)では、様々な国や地域での震災復興政策の試みを比較検討し、経済哲学パート(後藤玲子)では、復興の社会経済的基盤や格差を生む分配メカニズムに関する考察を進め、社会哲学パート(Paul Dumouchel)では、歴史的にみられるカタストロフィ後の経済社会においていかなり規範的議論が展開されたのかをふまえて、わが国のカタストロフィ後の市場社会において何が問われているのかについて総合的に検討する。そのうえで、わが国で求められている制度論的な構想を、3つのパートを総合するかたちで示し、国内外のカンファレンスや国際学術誌で発表し、最終的な共同研究の成果として共著論文集(英語および日本語)を公刊するところにまでつなげていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、主として平成29年1月14日に開催された、2016年度国際カンファレンス「不平等とカタストロフィ」について、主催の立命館大学国際言語文化研究所および共催の立命館大学先端総合学術研究科から想定以上の資金援助が得られたことが大きい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は各パートがこれまでの研究の成果を発表すべく、国内外、とくに海外での発表に力を入れることから、余剰に出た次年度使用額を旅費に充当する。また、国際学術誌に投稿するための英文校閲費やオープンアクセス料にも充てる予定である。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Ethical and Socio-legal Issues in Robotics2016
Author(s)
Paul Dumouchel
Organizer
Conference annuelle "Les developpements recents de l’intelligence artificielle: droit et justice"
Place of Presentation
University; de Montreal (Montreal, Canada)
Year and Date
2016-10-27
Int'l Joint Research / Invited
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