2015 Fiscal Year Research-status Report
生命倫理学・死生学における安楽死・尊厳死論の変容とキリスト教の歴史的社会的影響
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15K02023
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大谷 いづみ 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30454507)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生命倫理学 / 死生学 / 安楽死 / 尊厳死 / キリスト教 / フレッチャー / 太田典礼 / ナチス安楽死政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題「生命倫理学・死生学における安楽死・尊厳死論の変容とキリスト教の歴史的社会的影響」の初年度に当たる2015年度は、広くキリスト教と諸宗教、および関連諸学の文献蒐集と整理、さらに、立命館大学に所蔵する米国安楽死運動のマイクロフィルム資料の解析に当たった。また、2016年1月末に学外研究で渡英し、英国における安楽死運動の歴史をたどる糸口をみいだすことができた。さらに英国における安楽死・尊厳死問題のメディア報道とそれに対するキリスト教諸派の対応を観察しているところである。 他方、2015年11月には、フランスの精神分析医、ボリス・シリュルニク氏の来日講演会及びシンポジウムにて氏に親しく接することとなった。ナチス・ドイツ政権下に実行されたT4「安楽死」政策は、のちのアウシュヴィッツを象徴とするユダヤ人等の虐殺のプロトタイプとなったものであるが、本課題においても看過し得ない重要な史実である。わずか6歳にしてナチス占領下のユダヤ人一斉検挙を逃れ極貧を生き抜いて著名な精神分析医となったシリュルニク氏のレジリエンス研究は、本研究課題に新たな分析視点を加えることが予想される。 上記の調査研究を得て、上智大学グリーフケア人材養成講座にて特別ゲスト講義「憎むのでもなく許すのでもなく――歴史に立ち会う、歴史の証言者となる」(2015年12月19日)を行った。また、共著書として柏木惠子・高橋惠子編『人口の心理学――少子高齢社会の命と心』(ちとせプレス)が出版準備中である(2016年6月刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度は3ヶ月の病気欠勤のため研究に従事できなかった。また、電動車いすの使用を余儀なくされたため、とくに国外における単独での移動手段と滞在先の確保に予想以上の困難があり、2015年度に計画していた米国ヴァージニア大学における調査研究をはじめいくつかの調査を実施することができなかったため、(3)やや遅れていると自己評価した。 とはいえ、シリュルニク氏のレジリエンス研究を補助線とすることにより、これらの経験は、一見すると後退のように見えても、当事者としての経験と心身の変容の記録を学問的に昇華することにより、「人の生・老・病・死」と切り離せない本研究を、現実によりそった、より実践的で今日的意義のあるものに深化・発展させる可能性をもつものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を円滑に遂行するために、医学史分野において国内外での調査研究に実績のある川端美季氏を新たに研究分担者として迎え、研究組織体制を強化した。
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Causes of Carryover |
米国ヴァージニア大学ほかいくつかの調査を行えなかったため、そのための調査研究旅費を執行することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究を円滑に遂行するために、医学史分野において国内外での調査研究に実績のある川端美季氏を新たに研究分担者として迎え、研究組織体制を強化した。2015年度の未使用額については、2016年度に上記調査を実施するとともに、氏への分担金に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)