2017 Fiscal Year Research-status Report
生命倫理学・死生学における安楽死・尊厳死論の変容とキリスト教の歴史的社会的影響
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15K02023
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大谷 いづみ 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30454507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 美季 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00624868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生命倫理学 / 死生学 / キリスト教 / フレッチャー / 安楽死 / 尊厳死 / 優生思想 / ナチス安楽死政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の第3年度に当たる2017年度は、研究代表者である大谷が体調不良で3ヶ月病気欠勤することとなった。とはいえ、2016年7月におきた相模原障害者殺傷事件の1周年にあたる7月から9月にかけて、諸方面から、相模原障害者殺傷事件と優生思想、安楽死思想についての招待講演の依頼を受け、「安楽死・尊厳死論の系譜と相模原障害者殺傷事件」をテーマに、一般市民を対象とした学習会、自立生活を営む重度障害者とその支援者を対象とした学習会、福祉行政や実務家を対象とした研修講座等において研究成果を還元するとともに、その成果を一般市民の目から検証することができた。また、日本医学哲学・倫理学会第36回研究大会(於・帝京科学大学)のワークショップ「正常さと異常さの境界」において、「「生きるに値しない生命」殺害の医療化と規範化」と題する研究発表を行った。フロアには50名ほどの参加者があり、活発な討議が行われた。 同年度後半には、ナチスドイツ政権下で実行されたT4「安楽死」政策の事実がアメリカや日本に知られるようになった経緯について資料収集の緒に就いた。これは、本研究の主題の中核をなす、J・フレッチャーの安楽死思想の淵源をさぐると同時に、本研究を日本を含む東アジアと欧米キリスト教圏の歴史的経緯において検討するという、さらなる研究への発展を企図している。 また、研究分担者の川端は、安楽死・尊厳死論につながる日本の文化的土壌の成立および変容過程について検討し、「近代日本の国民道徳論における「潔白性」の位置づけ」として『人間科学研究』37号において成果を発表した。加えてキリスト教・西欧の医学の日本への影響を視野に入れ、ドイツ・イタリア・イギリスを中心に医学史・身体史に関する調査、日本で医学史と教育史における言説の資料調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の大谷は、2016年度の米国での調査において本研究の主たる主題であるJ・フレッチャーの思想変容の仮説を見直すこととなったものの、別途重要な資料の発見があり、2017年度に米国にて再調査を行う予定であった。しかしながら、3ヶ月の病気欠勤により実施が困難になったため、当初の研究計画の変更を余儀なくされた。相模原障害者殺傷事件により、ナチス・ドイツ政権下におけるT4「安楽死」政策がにわかに注目をあびたことにより、T4政策が米日において知られるようになった経緯という観点から、本研究全体を再検討する必要が生じたことも、遅延の理由である。とはいえ、後者については、これを実証する資料収集の緒に就いており、次項で述べるように、今後の研究の推進にむけた展望はある。 また、研究分担者である川端は、日本における安楽死・尊厳死言説形成の背景を検討するために、近代日本の倫理学者をはじめとする研究者たちの言説を国会図書館においてすすめ、成果もあげている。 以上の観点から、「やや遅れている」と自己評価し、より発展的な展望の元に、1年継続延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
やや遅れているとはいえ、T4政策が米国と日本に知られるようになった経緯については、すでに資料収集をはじめている。研究代表者である大谷は、これらの資料を基に、相模原障害者殺傷事件という視座から、懸案となっている単著の出版に傾注する。 研究分担者である川端は、日本の安楽死・尊厳死言説の下地となる、近代日本における国民道徳論における国民性のあり方が、より一般民衆に広められていく過程を検討する。 以上により、フレッチャーの思想変容とキリスト教との関連を、広くキリスト教圏の歴史的社会的背景および日本を含む東アジアとの関係のなかで位置づけることにより、本研究をより発展させる次の研究課題を念頭に、本研究にくぎりをつける方針である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の大谷の体調不良により、予定していた米国での調査を中止したため、使用残額が生じた。今年度は、研究のまとめと単著の刊行のための資料収集の他、これを円滑に進めるための人件費に充当する計画である。 研究分担者である川端は、前年度に引き続き、日本の安楽死・尊厳死言説の背景となる倫理学・教育学の言説の調査を続け、資料収集・整理を行うことに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)