2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50179644)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国思想 / 科学思想史 / 術数学 / 養生思想 / 日用類書 |
Outline of Annual Research Achievements |
『開元占経』『天地瑞祥志』及び『大唐陰陽書』に展開された天文占、暦術の理論的な分析を試み、出土簡帛を含む古代文献に遡及的な考察を行うことで、天文律暦学が依拠する自然現象の把握方式を明らかにした。遡及的考察においては、山梨県立大学准教授の名和敏光氏、早稲田大学大学院生の小倉聖氏とともに馬王堆漢墓出土簡帛や北京大学所蔵占術関連書の読書会を開催し、新たな研究成果を得た。12月12日には、名和氏が会長を務める中国出土資料学会の平成27年度第2回例会に復旦大学出土文献与古文字研究中心の廣瀬薫雄、程少軒両氏を招聘し、小倉氏の研究発表を含む講演会を企画した。 さらに、科学思想の発揮の場として術数学という自然学と占術の複合領域に考察のメスを入れ、万能薬に着眼して科学と宗教、思想の関係性を探った。その研究成果の一部は、2015年11月23日の神農祭で講演した。また、術数学をめぐって科学研究の場と道教文化の関連性を探り、「科学探索群体与道敎文化」という論文をまとめ、四川大学で行われた国際会議(代表:姜生教授)で基調報告と特別講演を行った。 国内外の研究者と連携を深めることを目的として、2015年6月17日-19日に人文研白眉准教授のBill MAK氏と協力してアジア伝統科学国際ワークショップ2015(総合テーマ「古今の宇宙観」)、2015年12月19日に形の文化会(代表:山口義久大阪府立大学名誉教授)との共催で術数学研究会(総合テーマ「無と有を繋ぐ世界」)、2016年1月9日に北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部、学校法人兵庫医科大学中医薬孔子学院と共催で伝統医療文化国際ワークショップ(総合テーマ「鍼灸道 未来への軌跡」、2016年3月5日~6日に国文学研究資料館主導国文研主導共同研究プロジェクト(代表:陳捷教授)との共催で「東アジアの技術的伝統への再照射」国際ワークショップ等を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
術数学の理論構造を多角的考察に行った結果、天文律暦学に加えて道教文化や医薬学との境界領域に、科学思想の発揮の場を見出すことができ、幅広い見地から研究を大いに進展させることができた。また、国内外の研究者を招聘し天文暦学、術数学や伝統医学の国際ワークショップを開催することによって、国際的な研究連携を図ることができ、今後の共同研究体制にそれなりの見通しが立った。 ただし、研究資料のデータベース構築に関しては、諸本の校合、整理やデジタル化に少々手間取り、少々遅れ気味であることは不満が残る。作業の副産物として注目すべき資料をいくつか発掘したので、それらを含めて次年度はデータベース事業を伸展させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
科学思想の発露の場として多彩な言説とその展開が見出せるのは、長生、養生をめぐる議論である。そこには中国的な人生哲学に基づく特有の身体論、生命観が発揮されている。理論的根幹には老子の自然哲学があり、種々の煉丹、修養の技法はその弟子、彭祖の長生術に派生する。そこで、先秦の道家者流の養生思想や神仙思想が中世、近世にどのような展開を繰り広げるかについて、『抱朴子』『千金方』から『活人心』に至る中近世の医薬書、仙書、養生書を分析的に考察する。 煉丹術や長生術の理論ベースは、『黄帝内経』に展開された内経医学理論と重なり合う部分はあるが、異なる医学知識が用いられている。その考察の手がかりとして、婦人病や虚労病または房中術に着目し、近年に改訂版が刊行された馬王堆医書、養生書に遡及した考察を行いたいと考えている。 近代に入って医学的アプローチによって健康法、心身鍛練術に応用しようとする試みがなされ、日本においては漢方医学復興の気運となる。科学思想史的なアプローチによって、その史的展開を検討し、伝統医療文化の思想的背景を探る。 以上の研究を推進するうえでは、医学史、伝統鍼灸の専門家との連携を積極的に図る。 修養の身体技法は道教、仏教と密接に関連するとともに世俗に向かうベクトルがある。そこで、近世に世俗で長生術、修養法がどのように流行するかの具体的様相を探る。考究対象には科学知識を啓蒙する媒体として『事林広記』や明代の日用類書を取り上げ、諸本の比較を行いながら、その原拠を明らかにしながら読解に着手する。その考察には、医薬関連だけではなく、初年度に検討した天文暦学や技芸など術数学の諸分野も含めて行い、古代との連続性を遡及的に検討する。
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Research Products
(20 results)