2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50179644)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 科学思想 / 養生思想 / 長生術 / 伝統医療文化 / 陰陽五行説 / 術数学 / 天文律暦学 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国で古代より大いに流行した長生術、養生術について、老子の「生」の哲学の系譜を辿り、馬王堆、張家山出土の養生書、『抱朴子』から近世の養生書に至るまで通時代的に思想史的考察を試み、「治身から治国へ」という政治思想との関連も探った。その研究成果の一部は、「長生の煉丹術「治身の自然学」として日本化学史学会や東方学会にてそれぞれ講演を行った。 また、養生思想が伝統医術に与えた影響を多角的に検討し、東アジアに特有の医療文化を開花させたことを構造的に把握し、その理論的特色を考察した。さらに、今日にも問題になっている不妊治療やアンチエイジングに関する遡及的考察を行い、中国的健康思想の源流を探ることで、漢方医学の本質や今後の課題を考究した。考察結果を論文にまとめ、京都医学史研究会の「恵迪」、漢方鍼医会の「漢方鍼医」や医学雑誌「医道の日本」に掲載した。また、全日本鍼灸学会、北里大学東洋医学総合研究所、(漢方)三考塾などのセミナーや新潟大学エコヘルス講習会の特別講師を務めるなど、臨床の現場で働く医師、漢方医や鍼灸師との連携を積極的に働きかけ、研究を通して得られた医学思想史的知見や漢方医学の現代的意義をアピールした。 国際連携と研究者ネットワークの構築を目的として、中国、韓国の科学史、思想史研究者を招聘し、術数学という視座からの科学思想史の必要性を提言した。9月には、四川大学古籍整理研究所副所長の尹波氏、同副研究員の白井順氏を招聘し、中国近世学術文化国際ワークショップを開催し、11月には日本道教学会の時に香港中文大学の黎志添教授を招聘し、科学思想と宋代儒教、道教文化との相互連関について討議を行った。12月には、朝鮮大学校教授の任セイヒョク氏と協力して宋相庸、申東源両氏をはじめとする韓国科学史研究者を招聘し、日韓科学史国際ワークショップ(総合テーマ「朝鮮科学史研究の現状と課題」)を主催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国における科学思想史を構想するうえで、最も大きな考究課題である伝統医学における養生思想について、構造的な把握を試み、これまであまり研究されていない「治身の自然学」という研究アプローチを見出すことができたことによって、研究の大きな進展が見込まれた。また、国内外の研究者を招聘し、道教文化、伝統医学、東アジア科学史といった多面的な方面のワークショップを開催し、共同研究プロジェクトを立ち上げる基盤作りを大いに推進することができた。 なお、近世における科学知識の伝播について、『卜筮元亀』『事林広記』等の諸本を調査し、新たな発見があったが、現在のところ検討中であり、次年度に引き続いて考察を行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間に取り組んだ天文律暦学、養生思想をめぐる科学思想の考察結果を踏まえ、老子や易の自然哲学との関連性を吟味しながら、中国科学思想の中心的な理論構造を明確にする。とりわけ、説明原理として大いに活用された陰陽五行説の形成や史的展開を中心的な考究課題とする。具体的に言えば、次の3つの事項である。(1)郭店楚簡(『太一生水』『五行』『六徳』)等の近年の出土文献による思想的源流の考察、(2)漢代思想の主要文献による先秦方術から漢代思想への発展過程、(3)漢代の思想革命おけるパラダイム変換による先秦方術から中世術数学への変容。以上の考察を終えた後、さらに道家思想から道教へ、京氏易から先天易へという自然哲学の流れにおいて、科学思想の展開を概観し、その全体像を素描して中国的な科学思考の特質を探り出す。 また、近世における科学啓蒙的著作や類書、日用類書や筆記類を資料として、科学知識が人々にどのように啓蒙され、活用されたかを多角的に考察する。そして、明末清初の西学受容において、四元素説、四体液説を基盤とする宇宙構造論や病因論に対して、陰陽五行説、運気論や易象数がどのような反発力を発揮したのかに着目して、東西科学思想の比較を試み、中国の科学思想が思想や科学の文化的基層構造をどのように形成したかを総括する。 科学思考の発揮の場である暦文化、伝統医療文化及び道教文化に精通した研究者を招聘し、中国科学思想史の主要文献を検討する読解ワークショップを開催する。10月末に国内外の研究者を集めて国際シンポジウムを開催し、3年間の研究成果を踏まえた国際共同研究プロジェクトの立ち上げを提言する。また、調査を試みた古代思想文献、断易、日用類書及び京都大学附属図書館所蔵の医薬書については、訳注データベースや目録等を作成し、Web公開によって共有できる研究情報とし、中国科学思想史研究を促進する環境整備を行う。
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Research Products
(27 results)
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[Presentation] 長生の煉丹術2016
Author(s)
武田 時昌
Organizer
2016年度化学史研究発表会(年会)
Place of Presentation
三重大学総合研究棟Ⅱメディアホール(三重県津市)
Year and Date
2016-07-10
Invited
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