2017 Fiscal Year Research-status Report
東アジア近代化の地域論的比較思想研究ー新出の康有為自筆資料に見る21世紀的課題ー
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15K02036
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
平野 和彦 山梨県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60238376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 聡 玉川大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80352722)
馬 燕 愛知文教大学, 人文学部, 准教授 (80734300)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 康有為教育思想 / 大隈重信 / 康有為墨蹟読解 / 孔子教 / プロテスタント宣教師 / 康有為列国遊記 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究代表者においては、墨蹟資料の翻字・読解に大きな進捗が見られた。これは、前年度行った、台湾中央研究院での資料調査と、台湾の共同研究者の協力によるところが多い。また、康有為晩年の肉筆資料が新たにされるこの分野の研究は、既に、中国、台湾の先行研究成果を一部修正する段階に至っている。これらは、今後、康有為の『海外游記』との比較研究において、近代中国知識人の異文化理解、異文化観の研究に大いに役立つものであり、論文、論考、ノートとして発表予定である。 分担者による、東アジアにおける宣教師の活動研究は着実にその深度を深め、多くの現地調査を経て進んでいる。儒教といわゆる「孔子教」への論及についても優れた成果を残しつつあり、清末における宣教師の目でそれらがどのように理解されたかという、東洋、西洋の枠組みを超越した視座から着実な観点を示しつつある。 康有為思想は教育に与えた影響についての研究は非常に興味深いものがあり、中国近代初期の学堂、学舎の時代から、今日的中国教育へに影響にまで思考を及ぼしつつあり、日本・日本人との関係性についても着実に研究を積み重ねている。 現在、これら研究成果が、これまでの康有為研究や近代の人物研究にはなかった新たな側面を開拓できるものと確信するに至っている。康有為が戊戌変法に至った人間性、その後に亡命して直視した欧米社会や世界の様相とそれへの思索、祖国を改良するために後進の育成に尽くした晩年の活動は、張勲復辟運動に参画したのち、ただ単に立憲君主国家実現を目指して失敗し、政界を引退した人物としてだけの評価で片づけるべきものではないと考えるからである。それは、21世紀の今日に至っても解決し得ないさまざまな問題を考える上で重要な鍵を含んでいると認識するに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この二年間、各研究担当者がそれぞれの分野の研究のため奔走してきたが、それを、「東アジアの近代化論」または「地域研究論」としてどのようにまとめていくかについての方向性についての討論が不十分と思われる。 単純に一括りに論じることのできない「康有為」研究の難しさは、近代の人物が既に過去の人物として語られるかのような評価もある中で、やはり、康有為には特有の幅の広さがあり、現代への大きな影響と21世紀的課題をより明確に認識していく必要性を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前半は、各研究者の分担研究を進め、年度末に、来年度へ向けての総括的方向性の準備を行う予定である。 概括的に記すならば、儒教と孔子教、宣教師が見た儒教、康有為資料に見る欧米文化の実見的受容、中国現代教育と日本の教育、という3本立ての方向性が想定できようが、これら分野は、中国近代という地域性からみても既に多くの先行研究がある。 それら先行研究との差別化を図り、より現代的な枠組みで新しい康有為論を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度繰越金があったため、今年度旅費使用額との差額および物品費に次年度使用額が生じた。 これは、次年度の旅費、物品費に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)