2017 Fiscal Year Annual Research Report
Imagery of Julian 'the Apostate': its Formation, Transfiguration and Reception
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15K02071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高久 恭子 (中西恭子) 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 研究員 (90626590)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ユリアヌス / 新プラトン主義 / 初期キリスト教 / 古代末期地中海世界 / ローマ宗教史 / 宗教史・宗教思想史 / 古典の受容 / インテレクチュアル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度・2016年度は『ユリアヌスの信仰世界 万華鏡のなかの哲人皇帝』(慶應義塾大学出版会、2016年)の上梓に向けて研究を行った。最終年度は京都大学学術出版会西洋古典叢書から刊行予定の『ユリアヌス著作集』(全3巻)の翻訳・注解作業を行うとともに、慶應義塾大学出版会から刊行予定の『ユリアヌスとコンスタンティヌス朝の宗教』(仮題)の執筆に向けて調査を行った。 この段階で、ユリアヌスの主要著作の新校訂本に加えて、ユリアヌスの思想の受容に関して重要な証言を提供するアレクサンドリアのキュリロス『ユリアヌス駁論』とキュロスのテオドーレートス『ギリシア病の治療について』の新校訂本が刊行されたため、これまで行った翻訳作業を全面的に見直す必要が生じた。『ユリアヌスとコンスタンティヌス朝の宗教』の執筆にあたり、古代末期地中海世界における各種の宗教や思想結社にみられる信仰や信念体系の次世代への継承について新たに調査を行う必要が生じた。これに関連して、後期ローマ帝国の宗教政策におけるキリスト教以外の宗教(特にユダヤ教)に対する処遇や、次世代への信仰の継承に果たした当時の女性の役割についても調査を進め、口頭報告を行った。 『ユリアヌスの信仰世界 万華鏡のなかの哲人皇帝』は歴史理論・史学史研究者や、現代詩歌・文藝批評関係者にも好評を博した。2017年度には現代日本における歴史小説のなかの西洋古典像の描写について口頭報告を行い、現代日本語詩歌における広義の古典の受容をめぐる論考と書評を手がけた。 本研究課題では当初、文藝復興期以後のユリアヌス受容史の精査を予定していたが、ウォーバーグ研究所図書館などでの海外文献調査の結果、より広い視野のもとに研究を行うために、文藝復興期における西洋古典・初期キリスト教文献受容のなかの宗教史像の系譜とその研究状況の見取り図を新たに得る必要が生じた。今後の課題としたい。
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Research Products
(6 results)