2015 Fiscal Year Research-status Report
近世から近代にかけて浄土教とキリスト教の交流史における後生観と救済観
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15K02084
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
James BASKIND 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (50455226)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 江戸思想史 / 妙貞問答 / キリスト教 / 日本宗教 / 後生観 / 仏教 / 禅宗 / 浄土教 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度行なってきた研究では、江戸初期以降の日本思想システム(仏・神・儒)はキリスト教との交流によってどのように成立・発展してきたということを検討してきた。 研究方法としては、不干斎ハビアンの教理書である『妙貞問答』を軸に仏・神・儒の後生・救済、倫理、そして究極原理におけるそれぞれの言説を検討しながら、どのようにお互いが意味解釈されたきたかを追求することによって、東・西の共有する精神的遺産を究明してきた。 この年度はケンブリッジ大学名誉教授であるリチャードバウリング先生と協力して、『妙貞問答』の完全英訳ができ、一冊の書籍として発表することができた。翻訳だけではなく、研究編もあり、その中で、『妙貞問答』を江戸思想界における位置づけを究明する序論もキリスト教のデウスという最高原理と禅や他の仏教宗派で説かれた「空」や「無」との比較の論文も、完成・発表できた。刊行した書籍は The Myotei Dialogues: A Japanese Christian Critique of Native Traditions. NUS Series. Brill, Leiden. Co-edited with Richard Bowring, 2015. 下記の論文の方は "The Myotei Dialogues in Early Edo Thought" co-authored with Richard Bowring, in Baskind and Bowring, 2015, pp. 3-15 そして、"Emptiness and Nothingness in Habian's Critique of Buddhism" in Baskind and Bowring, 2015, pp. 16-30ということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は、以前の成果をさらに発展させ、ある程度の学術・研究基盤・土台があったため、随分とスムーズに進んできた。それに、名古屋市立大学にもよい研究環境を与えられ、資料・出張・研究打ち合わせや研究会においても不自由はしなかったことも一つの要因になる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、明治期の浄土教系と新たに来日したプロテスタントキリスト教の宣教師との交流史に移っていく。英語での最大の先行研究としては、Notto R. Thelle氏のBuddhism and Christianity in Japan: From Conflict to Dialogue, 1854-1899である。 この研究書は我々の明治期における仏教とキリスト教との交流史の理解へ大きく貢献しており、このテーマの立派な入門書である。多くの当時のテキストを紹介する中、その中身を触れるが、持続的な検討を欠けている。本研究ではより綿密、より深い検討を加え、多くの文献の現代語訳、英訳によって、国際学会に紹介するとともに、そのキリスト教側、仏教側の論破方法や論点を明らかにし、当時の盛んに輸入されていた西洋哲学思想や科学思想、政治的情勢の有り様との関連を解明していく。
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Causes of Carryover |
次年度は、続けて研究活動を十分に行なうため、資料収集・研究打ち合わせ・老朽化した機器の交換などが不可欠であるため、次年度の使用全額が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画は、資料収集や研究打ち合わせのための国内外の出張と老朽化したパソコンやプリンター、メモリーなどの購入に次年度の全額を使用する予定である。
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