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2015 Fiscal Year Research-status Report

ユリアヌスを中心とするペラギウス派第2世代の神学に関する思想史的・実証的総合研究

Research Project

Project/Area Number 15K02088
Research InstitutionNanzan University

Principal Investigator

山田 望  南山大学, 総合政策学部, 教授 (70279967)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2019-03-31
Keywordsユリアヌス / アウグスティヌス / 原罪 / 人間本性 / 自由意志 / アダム / 罪責 / マニ教
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、研究実施計画に従って、「主要研究」と「補完研究」との二つの部分に分けられる。初年度研究実績としては、「主要研究」の内、ユリアヌス文書の解析とユリアヌスの排斥に至るまでの歴史的経緯の分析・考察を行った。まず、ユリアヌス文書が論争相手であるアウグスティヌスとの神学的、人間学的諸問題に関する論争記録であることから、双方の論点の展開過程を辿りつつ、両者の主張の根本的な相違点の解明に集中した。アウグスティヌスは、アダムの堕罪以降、人間の自然本性は質的実態変化をきたし、これが罪責をも伴った原罪として親から子へ、先祖から子孫へとあたかも遺伝的であるかのうように伝播すると考え、その痕跡を人間の性欲の内に見ようとする。一方、ユリアヌスにとって、アダムとイブの侵した罪は、アウグスティヌスが主張したように罪責をも伴った原罪として遺伝的に伝播するものではなく、ましてや性欲がその痕跡というわけでもない。ユリアヌスは、いわば生物学的、人間学的に人間の自然本性を捉え、それが人祖の堕罪によって回復し難いほどの損傷を被ったとは理解していない。アウグスティヌスの原罪理解は、マニ教的人間観に根ざしており、キリスト教的人間観、自然観とは言えないものである、とユリアヌスは主張した。この論争の過程・経緯を辿り、論旨を解明する中で、アウグスティヌスもユリアヌスも、当時としてはきわめて高度な修辞的(レトリカル)なロジックを踏襲しており、とりわけ、ユリアヌスは、アウスグティヌスの修辞法、論法を逆手にとって真逆の論理で切り返すという手法を自家薬籠中のものとしていたことが明らかとなった。
「補完研究」としては、北イタリアを中心に、ミラノ、アクイレイア、ローマ、それぞれの地での洗礼盤にどのような特徴が伺えるかを調査したが、調査時期が3月末と年度末にずれ込んだため、調査事項の分析や解明には、これから着手する予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

「主要研究」と「補完研究」の内、「主要研究」については、おおむね予定通りに研究が進行し、ユリアヌス文書の大筋の歴史学的・文献学的な分析・解明が順調に進展したと考えられる。しかし、「補完研究」としての、ローマ、ミラノ、アクイレイアの地に存在する洗礼堂や洗礼盤の調査・研究については、調査自体が年度末にまでずれ込んだこと、研究代表者本人が学部長の重責を担っており、十分な研究時間を費やすことができなかったことなどの理由から、分析・考察をこれから行う予定となっている。その点で、進捗状況としてはやや遅れ気味であることを付記する。

Strategy for Future Research Activity

今後の推進方策としては、「主要研究」に盛り込まれているユリアヌス文書の分析と解明が、依然として筆頭になされるべき課題であると見なされており、とりわけ、論点となっているアウグスティヌス型の原罪論が、果してユリアヌスの指摘するように、マニ教的な人間論・罪責観に匹敵するほどのものであったのか否かが、引き続き論争の主題となる。また、ユリアヌスの人間観は、モプスエスティアのテオドロスやアクイレイアのルフィーヌス、アクイレイアのクロマティウスの人間観といかなる関係にあったのかについても考察を深めていく予定である。第2の「補完研究」としてのイタリア諸都市の洗礼堂、洗礼盤調査については、収集したデータについてこれから分析・解明を行う予定であり、この調査・分析から、成人洗礼を奨励していたユリアヌスはじめペラギウス派第2世代の活動拠点やそれにまつわる事象の解明がなされる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] What Is the Evil to Be Overcome? Differences between Augustine’s and Pelagius’ Views on Christ’s Life and Death2015

    • Author(s)
      NOZOMU YAMADA
    • Journal Title

      SCRINIUM

      Volume: 11 Pages: 160-180

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Pelagius’ Narrative Techniques – Rhetorical Influences and Negative Responses from Opponents2015

    • Author(s)
      NOZOMU YAMADA
    • Organizer
      XVII. International Conference on Patristic Studies Oxford
    • Place of Presentation
      OXFORD, UK
    • Year and Date
      2015-08-10 – 2015-08-14
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2017-01-06  

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