2016 Fiscal Year Research-status Report
近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―
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15K02093
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呂 順長 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (40388591) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 山本梅崖(憲) / 梅清処塾 / 藤沢南岳 / 泊園書院 / 在野儒学者 / 自由民権運動 / 大成会 / 釈奠 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代大阪の在野儒学者について、梅清処塾の山本梅崖、泊園書院の藤沢南岳らを対象に、日本漢学専攻の矢羽野(研究代表者)が日中交流史専攻の呂順長氏(研究協力者)の協力を得て、経学・西洋受容および社会政治上の活動を多角的に解明し、その思想史的意義を考察するものである。 28年度の研究成果は以下の通りである。矢羽野については、山本梅崖の主著『論語私見』の特徴的な記述を抽出して読解を進め、また西洋学理解が反映されている『梅清處文鈔』所収の「自由解」「自由郷記」の読解も進めた。また社会政治上の活動として、①梅崖と南岳との交流の経緯を梅崖の伯父の竹園、父の竹渓らの墓碑銘(南岳撰文)から明らかにするとともに、②南岳と梅崖が明治20年代初頭に協力して設立した儒教振興団体「大成会」の活動を調べ、特に彼らが重視して催行した孔子祭祀「釈奠」に関する記録や詩文を収集解読し、その実施経緯、清末の康有為ら変法維新派ともつながる思想史的意義を明らかにした。 ①については、「山本竹園・竹渓墓誌銘訳注―近代大阪における儒学者の交流一斑―」(四天王寺大学紀要63号、2017年3月)として公表、②については、「自由民権の儒学者・山本梅崖と泊園書院」(泊園書院シンポジウム=第56回泊園記念講座、関西大学、2016年10月30日)、「近代日本における釋奠の復興―明治期の儒者藤沢南岳・山本梅崖を例に―」(浙江工商大学東亜語言文化学院 五洲講壇、2016年12月26日)などで口頭発表した。 呂順長氏は、清末変法維新派の士人(康有儀、梁啓超、康有為、王照、徐勤ら)が山本梅崖へ送った手紙を翻刻し、それに注釈と解説を付した『清末維新派人物致山本憲書札考釈』にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進んでいる。ただし研究計画を変更した部分がある。すなわち、29年度に着手の予定であった藤沢南岳の『中庸』解釈について、ジェレミー・ウッド「泊園書院の『中庸』学について」が公表され、矢羽野の構想と重なったため、留意しつつ後に回すこととし、早めに計画を変更して、梅崖・南岳らの社会政治活動である釈奠(孔子祭祀)に研究を進めた。 梅崖の『論語私見』については、梅崖独特の説、『論語』の重要概念に関する梅崖が開設する「論語卮言」(『論語私見』巻頭)、『梅清處文鈔』所収「自由解」「自由郷記」についての読解を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度の前半に梅崖の『論語私見』および『梅清處文鈔』所収「自由解」「自由郷記」の会読結果をもとに、梅崖の論語解釈、特に「自由」観について西洋学との差異に注意しつつ考察し、論文を作成する。 また明治20年代初頭から梅崖や南岳の弟子越智宣哲らが催行した釈奠(孔子祭祀)について、その実態を示す文献資料をまとめ、祭祀の画像とともに公表する。 泊園書院の『中庸』解釈を後回しにしたため、梅崖の『論語』解釈と関連させて、泊園書院の『論語』学の考察を前倒しで行う。
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Causes of Carryover |
予定していた資料収集のための国内旅費について、東京・岡山等への予定であったが、前述の計画変更により、釈奠およびその清末変法維新派との関連などの研究を優先させたため、当初予定の研究出張を行わなかったため。 また、必要な資料の一部がデジタルアーカイブ化されていたり、デジタルカメラでの撮影が許可されたりし、複写費用が軽減されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定により、山本梅崖、藤沢南岳ら大阪在野儒学者の関連資料の収集のため、東京の国会図書館を中心に、国内への研究出張を行う。 また文献複写費が軽減されることを受け、研究協力者の在籍する中国浙江省の大学で11月に開催予定のシンポジウムに参加し、山本梅崖と清末変法維新派との思想的関係について発表する。
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Research Products
(5 results)