2018 Fiscal Year Research-status Report
近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―
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15K02093
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呂 順長 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (40388591) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 山本梅崖(憲) / 梅清處塾 / 藤澤南岳 / 泊園書院 / 自由民権運動 / 西村天囚 / 論語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度(2018)は、年度前半に〈経学・西洋学受容分野〉の主要テーマである梅崖著『論語私見』について、これまでの学会やシンポジウムにおける検討の結果を踏んで、「山本梅崖的自由民権思想与儒教――以与清末変法派人物的交流為線索――」(王宝平主編『浙江与東亜―新史料与新視点』社会科学出版社、2019年6月刊行予定)を執筆した。またそれに加筆修正を加えた「山本梅崖の自由民権と儒教観―清末変法派との交流を手掛かりに―」(大阪大学中国学会『中国研究集刊』第65号、2019年6月刊行予定)も執筆した。 平成の29年(2017)夏、大阪大学の湯浅邦弘教授、島根大学の竹田健二教授によって、西村天囚(1865~1924)の書簡など約2000点の資料がその故郷の鹿児島県種子島に保存されていることが明かにされ、翌年にかけて調査報告がなされた。30年度は当初計画では藤澤南岳の『中庸家説』『増補蘇批孟子』の研究に従事することになっていたが、天囚研究の大きく進展する可能性が生まれ、当初計画を繰り上げて天囚の『論語』解釈に取り組んだ。天囚の著述目録にその『論語』研究の集成である『論語集釈』が見えるが、天囚の遺著や蔵書を収蔵する大阪大学懐徳堂文庫には所在が確認できない。ただし、同文庫には天囚が諸説や自説を書き入れた黄式三『論語後案』が残る。この書入の分析から、所在未詳の『論語集釈』の内容を推察し、天囚の『論語』解釈を導き出せると考え、検討の結果を2018年12月9日の懐徳堂研究会において「西村天囚の学問と『論語』研究と」と題して発表した。 その他、明治期大阪の在野儒学者の交流を知る資料として、明治20年代前半の大阪で発行された自由民権派の新聞「新東雲聞」の漢詩漢文欄を調査した。自由民権派の儒者として知られる梅崖だけでなく、藤沢南岳も当新聞の主義主張に一定の支持を示していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの主な理由は、勤務校における校務にある。平成30年度4月に学部長に就任し、次第に従来のペースで研究に従事することが困難になった。とりわけ、研究成果を出すまでに時間を要する精読、訳注の作業が滞ることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に執筆した論文の紙数の関係でまとめきれなかった梅崖の主著『論語私見』の特質について、朱子や徂徠らの解釈と比較しつつ検討することにより、近代の自由民権思想の影響を受けた経書解釈として日本儒学思想史に位置づける。従来ほとんど注目されなかった近代在野儒学者の経学的営為として論文にまとめて公表する。 西村天囚の『論語』研究に関して、昨年度におこなった取り組みによって、明治期に清末外交官がもたらした文学思潮や、清国旅行における天囚と清末民初の知識人との個人的な交流の影響を受けていることが見て取れた。種子島に保存される天囚の新資料にも目配りしつつ、さらに考察を深める。その成果を、秋に開催される学会あるいはシンポジウムにおいて発表するとともに、今年度中の論文完成をめざす。
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Causes of Carryover |
遠方への調査が校務等の事情で当初計画で考えたように行えなかったため。
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Research Products
(3 results)