2020 Fiscal Year Research-status Report
近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―
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15K02093
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呂 順長 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (40388591) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 山本梅崖(憲) / 梅清處塾 / 藤沢南岳 / 泊園書院 / 岡田松窓(寿一郎) / 西村天囚(時彦) / 論語 |
Outline of Annual Research Achievements |
西村天囚の『論語』研究に関して研究を行った。天囚の『論語』説は、それを集大成したという『論語集釈』が文献上に見えるが現在未詳であった。(令和2年度末に発見された。後述。)しかし、黄式三『論語後案』に対する天囚の書入には日中の学者の諸説が引用され、引用自体に天囚の関心の所在が見て取れ、また処々に天囚の所説を伺うこともできる。これに基づき、天囚の『論語』理解の基礎にある、従来の『論語』研究に対する評価、天囚が影響を受けたとされる学派(桐城派)との関連、そこから紡ぎ出される天囚の『論語』解釈など、天囚の『論語』研究の特色を考察した。特に現在日本の図書館・研究機関において天囚所蔵の一冊しか確認できない(「全國漢籍データベース」)清朝後期の学者の著作が要所(特にに漢字字源解釈)に引用されていることが注目された。そこでその学者と桐城派との関連、および学術成果(特に文字学)について調査し考察を進めた。また、天囚のその学者・著作への関心が、清末の学者との人的交流に由来する可能性が高いため、彼らとの交流において成立した漢詩集にもとづき、天囚に影響を与えた人脈の学術的な意味を考察した。 いっぽう、山本梅崖が泊園書院の藤沢南岳と連携して展開した孔子祭祀「釈奠」に関連して、南岳や南岳の河内における門人が中心となって構成された釈奠会の中心人物である岡田松窓(寿一郎)の閑適の詩を解読し、その一部を訳注として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和元年度末から感染が拡大したコロナ感染症の影響が大きい。校務においては教員および役職者として新型コロナ禍に関連する対応が必要となり、教育面では遠隔授業のためのICT機器の操作の習得習熟、ICT利用に対応した教材作成、感染防止対策のための個別指導等に多くの時間と精力を費やした。いずれも計画当初には想定できない事態が展開し、研究の遂行は極めて困難な状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度末3月20日開催の懐徳堂研究会において竹田健二(島根大学学術研究院教育学系教授) 「西村天囚関係資料の調査と研究―種子島における新資料の発見を中心に―」により、これまで所在未詳であった西村天囚の『論語』研究の集大成『論語集釈』が、現在種子島開発総合センター鉄砲館に所蔵されていることが報告された。これまで進めてきた『論語後案』に対する天囚の書入と天囚の『論語』説の完成形である『論語集釈』とを比較検討し、天囚の『論語』説の成立経過およびその特徴を明らかにする。 かつ山本梅崖については、主著『論語私見』および啓蒙書『四書講義』にみえる解釈を基に、梅崖の学問観(徂徠学の継承と展開)、人間観(性情観)、経世論(仁義と自由民権)といった観点で公表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナ感染症の拡大により、校務、教育等に多大な時間と労力を費やし、研究を進めることが困難となり、研究費の執行ができなかった。論文執筆のため関係資料の収集および調査のため書籍費、調査旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)