2021 Fiscal Year Research-status Report
近代大阪の在野儒学者の研究―その経学と社会政治活動―
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15K02093
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呂 順長 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (40388591) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 山本梅崖(憲) / 梅清處塾 / 藤澤南岳 / 泊園書院 / 岡田松窓(寿一郎) / 西村天囚(時彦) / 論語 / 中庸 |
Outline of Annual Research Achievements |
〈経学分野〉および〈社会政治分野〉にも関わる研究について、令和3年度末の懐徳堂研究会において竹田健二氏「西村天囚関係資料の調査と研究―種子島における新資料の発見を中心に―」により、所在未詳であった西村天囚の『論語』研究の集大成『論語集釈』の所在が報告され、同研究会の協力を得て原本の複写を入手し、重要な章句を中心に解読を進めた。 この発見により天囚『論語』学の研究が進展し、同書の写真版に解説を付した湯浅邦弘氏『西村天囚『論語集釈』』(令和3年11月26日、大阪大学大学院文学研究科)が刊行された。湯浅氏による『論語集釈』の基礎研究を踏まえ、それに自身の研究を位置づけることを図った。これまで進めてきた『論語後案』に対する天囚の書入と天囚の『論語』研究の完成形である『論語集釈』とを比較検討し、天囚の『論語』研究の成立・経過およびその特徴を考察した。結果として、『論語集釈』にも『論語後案』に見えた特徴が継承されていることが確認でき、天囚の『論語』学における桐城派の学問観や学術成果(特に文字学)および清末の学者との人的交流の影響が指摘できた。 また、〈社会政治分野〉において、山本梅崖が藤沢南岳と連携して展開した孔子祭祀「釈奠」に関連し、南岳の河内の門人により構成された釈奠会の中心人物で、梅崖とも交流のあった岡田松窓(寿一郎)の閑適詩・社会詩を解読し、一般向けの講演ながら公表した。また梅崖『四書講義』や南岳の『中庸講義』など『大学』『中庸』研究に関連し、『大学』『中庸』の近世・近代の日本人への影響を概観し、一般向けの講演ながら公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に引き続きコロナ感染症の影響が大きかった。4~6月、7~9月の緊急事態宣言下で遠隔授業、宣言解除で一部対面再開、11月に全面対面再開、年末年始のオミクロン株感染急拡大で、校務においては学部長・教員の通常業務のほか、新型コロナ向けの事務対応(感染学生の状況の聴取)が必要であった。教育面では変化する授業・試験の実施形態への対応に追われた。またICT活用による教育の質的な向上のため、機器の修得操作、対応する教材作成などの準備、個別指導等に時間と精力を要した。計画当初に想定できない事態が続き、研究の遂行に困難がともなった。
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Strategy for Future Research Activity |
西村天囚の『論語』研究の集大成『論語集釈』とその前段階である『論語後案』書き入れとの比較検討の成果について、上記の「実績状況」の内容を懐徳堂研究会で報告し、年度内に論文を公表する。また山本梅崖については、刊行が遅れていた「山本梅崖的自由民権思想与儒教――以与清末変法派人物的交流為線索――」(王宝平主編『浙江与東亜―新史料与新視点』社会科学出版社、2019年6月刊行予定)が刊行されるとの連絡があった。この論文に盛り込めなかった内容、すなわち主著『論語私見』および啓蒙書『四書講義』にみえる梅崖の学問観(徂徠学の継承と展開)、人間観(性情観)、経世論(仁義と自由民権)などを整理して公表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
前述のように、コロナ感染症の拡大により予定していた研究が進まなかったことが主な要因である。繰越金は再開された研究会への旅費、研究成果公表のための翻訳・ネイティブチェックの謝金に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)