2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02121
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
太田 暁子 東京音楽大学, 音楽学部, 講師 (90399741)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 音楽学 / 三味線音楽 / 義太夫節 / 浄瑠璃 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は17世紀後半から現在に至るまで語り継がれ、「音曲の司」とも称されてきた浄瑠璃の一派「義太夫節」の実態を三味線譜の解釈を主たる手段として具現化し、音楽面における歴史的変遷を明らかにすることを目的としている。本研究では義太夫節の三味線の手数(てかず。西洋音楽における音符の数や、演奏する旋律そのものを意味する)が歴史的にどのように変遷したのかを明らかにする作業が中心となる。 本年度は義太夫三味線の奏法に関して記された最古の書として知られる史料「浄瑠理三味線ひとり稽古」の五線譜化を行った。当該史料は前編が宝暦7年(1757)、後編が宝暦10年(1760)に刊行された二冊からなる義太夫三味線の独習書だが、現時点に至るまでごく部分的な解釈が試みられたことはあったものの、楽譜部分全体における具体的な解釈には至っていなかった。それは史料の掲載譜が口三味線を重視した譜であり、勘所指定や凡例の厳密さに欠けていたために解釈が困難であったこと等が要因であるが、本研究の特色はその音楽部分全体の解釈という領域に踏み込んだ点にある。 浄瑠璃の節名は浄瑠璃本に書かれてはいるものの、三味線譜が併記されている譜が存在する場合には、それと対照することで音遣いがより具体的となる。浄瑠璃の三味線譜が考案された背景には、手数が増えたり複雑化したりしたことがあると指摘されることがあるが、三味線の手数が増えるほど、演奏において三味線弾きが音楽を司る確率が高くなる。これは義太夫節において三味線弾きの存在価値や演奏上の地位が実質的に上がってきたことを示唆していると考えられ、こうした傾向が実際にあったのか、引き続き検証を行っていく。 そのほか、三味線譜の五線譜化にあたって楽譜ソフトウエアによる記譜の検討などを行った。また他研究者主催の三味線音楽の研究会や浄瑠璃本の調査に参加し、史料解読に繋がる専門的知識をあおいだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は主に「浄瑠理三味線ひとり稽古」の解釈と三味線譜部分の五線譜化を行った。その成果として論文「義太夫三味線独習書『浄瑠理三味線 ひとり稽古』の五線譜化」(東京音楽大学研究紀要 第40号)において先ず前編の五線譜を掲載した。 また第一回研究成果報告会(11月27日、於:東京藝術大学)を開催し、研究成果に関する口頭発表を行った。そのほか、また前年度に引き続き江戸期の義太夫の譜に関してのリサーチを行った。おおむね想定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは「浄瑠理三味線ひとり稽古」の後編の五線譜化を公表し、1700年代半ばの旋律と現行旋律との異同の確認を行う。また前年度に引き続き江戸期の義太夫の譜に関しての検証を行うとともに、義太夫節の三味線の記譜と、浄瑠璃以外の分野の記譜との共通点に関しても引き続きリサーチを行っていく。 また、成果発表として学会発表や研究成果報告会を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度より前の年度から生じた使用額が一部残ったために生じた次年度使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おもに三味線譜の五線譜化の入力作業、研究成果報告会開催および学会発表の準備に伴う旅費や謝金として充当する。
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Research Products
(1 results)