2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02149
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
河本 真理 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (10454539)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コラージュ / 服飾 / ジェンダー / ソニア・ドローネー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、西洋の服飾デザインにおけるコラージュを研究するに当たり、まずソニア・ドローネーのコラージュの作品調査と資料収集を予定していたが、折しもロンドンのテート・モダンでソニア・ドローネーの大規模な回顧展が開催された。絵画・服飾・文学・舞踊等の様々な領域を横断したソニア・ドローネーの多様な活動に焦点を当てたこの展覧会で、主要作品を調査することができた。パリのフランス国立図書館では、関連する文献の調査・収集を行った。 《ベッドカバー》(1911年)は、ロシアの農民のやり方に倣って、ソニアが息子シャルルのために作ったパッチワーク/コラージュから生まれたものである。「様々な布の切れ端の配置がキュビスムの構成のように見えた」ことから、こうしたコラージュの手法が本の表紙や玩具箱などの装飾にも適用されるようになった。フランスの前衛的なキュビスムとロシアの伝統的な民衆芸術(刺繍)が融合した結果ともいえる。 ソニア・ドローネーにとって、「コラージュ」とともに重要になったのは、夫ロベールから影響を受けた「同時対比」の色彩(補色など二つ以上の色彩の相互作用に関するシュヴルールの理論)である。ローブ・シミュルタネ[robe simultanee 同時的ドレス](1913年)は、「同時対比」による抽象的な色面構成を「パッチワーク/コラージュ」によって衣裳に仕立てたもので、ソニアはこのローブをまとってダンスホール「バル・ビュリエ」に通った。ソニアはまた、このダンスホールのダンサーのリズミカルな動きを「同時対比」を用いて絵画化している(《バル・ビュリエ》1913年)。こうした「コラージュ」や「同時対比」といった共通分母を介した複数の媒体(絵画/服飾/書物の装幀…)の間の自在な行き来が、ソニア・ドローネーの「総合芸術作品」の特色の一つであり、彼女の今日的な意義を高めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標としていたソニア・ドローネーのコラージュの作品調査と資料収集に関しては、テート・モダンの大回顧展のおかげで、当初の計画以上に集中的・効率的に詳細な調査を進めることができた。 ただ、東アジアの服飾デザインにおけるコラージュの一つ、中国敦煌の袈裟(大英博物館蔵)は、保存状態など種々の事情で平成27年度中に実物を調査することは困難であった。やむを得ない場合は、高解像度デジタル画像で対応する。 したがって、全体としては、おおむね順調に研究は進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、平成28年度は、日本の糞掃衣の作品調査と資料収集、およびミリアム・シャピロの《キモノの解剖学》の作品調査と資料収集を行う。
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Causes of Carryover |
日本女子大学の校務のため、予定していた海外調査の日数が確保できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査の日数を2日ほど増やす予定である。
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