2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02149
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
河本 真理 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (10454539)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コラージュ / 服飾 / ジェンダー / ミリアム・シャピロ / アンリ・マティス / パウル・クレー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、ミリアム・シャピロの「フィメージfemmage」の代表作《キモノの解剖学》(1976年)について資料収集を行い、コラージュや服飾に内包されるジェンダーの構造について考察した。 「フィメージ」は、メリッサ・メイヤーとミリアム・シャピロが1978年に、コラージュ、アッサンブラージュ、デクパージュ、フォトモンタージュの全ての活動を含めるために作り出した造語である。この2人によれば、「これらの活動は、女性たちが伝統的な女性の技術――縫うこと、継ぎ接ぎ、ホックで留めること、切り取ること、アップリケ、料理その他――を用いて、女性の芸術を成し遂げるために実践された。そうした活動には男性も携わるが、歴史上女性に割り当てられてきた」。メイヤーとシャピロは、コラージュがピカソとブラックによって創造されたというモダニズム的な美術史が、主流に属さない芸術家(非西洋・女性・無名の民衆芸術家)=「他者」によって、ピカソとブラックより「前」に制作されたコラージュの存在を、ロー・アートとして等閑視していると批判する。 シャピロの《キモノの解剖学》は、シェリー・ブロディーから送られた日本の着物の本に想を得て、パッチワーク=コラージュのように布の切れ端を貼り付けた10枚のパネルからなる作品である。シャピロは、「キモノを新しい女性のための晴れ着として選んだ」といい、非西洋=日本の女性の着物(シャピロは当初女性が着用するものだと思っていた)をモティーフとして参照・引用したのは、モダニズム的な美術史にとっての「他者」を導入しようという意図からだろう。この作品の着想源は、Seiroku Noma, Japanese Costume and Textile Arts(1974)に掲載された、金銀襴緞子等縫合胴服(上杉神社)と束熨斗文様振袖(京都国立博物館)および『雛形 三千風』(1745年)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の目標としていたミリアム・シャピロの《キモノの解剖学》の資料収集に関しては順調に進み、作品の着想源も同定できた意義は大きいと考える。ただ、10枚のパネルからなる17メートルを超す作品であるため、所蔵先で実物を調査することは困難であった。やむを得ない場合は、高解像度デジタル画像で対応する。 その代わり、比較対象としてアンリ・マティスの上祭服(ヴァンス、ロザリオ礼拝堂)およびパウル・クレーの作品を調査し、資料収集を行った。 したがって、全体としては、おおむね順調に研究は進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、平成29年度は、日本の金銀襴緞子等縫合胴服(上杉神社)・百徳着物(金沢・真成寺)、糞掃衣の作品調査と資料収集、および韓国のチョガッポの作品調査と資料収集を行う。平成27~29年度まで調査した作品の比較研究を行い、歴史的・社会的・芸術的文脈の差異を踏まえた上で、それらに共通するコラージュの美学を抽出し、それぞれをコラージュのコンテクストの中に位置づける。コラージュや服飾(装飾)に内包されるジェンダーの構造の解明も進める。
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Causes of Carryover |
正倉院展に糞掃衣が出品されておらず、国内調査(奈良)を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内調査の日数を増やす予定である。
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