2016 Fiscal Year Research-status Report
ラグーザの未公刊史料を通してみる近代イタリアにおける美術・工芸を巡る状況の研究
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15K02152
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
河上 眞理 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20411316)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヴィンチェンツォ・ラグーザ / パレルモ / ルガーノ / 日本美術 / ジャポニスム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究2年目の今年度はスイス及びイタリアでの在外調査・研究をおこなった。ルガーノではラグーザが来日前に制作した作品を見学するとともに、ルガーノ州立図書館において関連資料の閲覧・複写をおこなった。またラグーザ作品との関連が見られるヴィンチェンツォ・ヴェーラ作品見学のため、リゴルネット(スイス)のヴェーラ美術館を訪れ、多くの知見を得ることができた。 ラグーザの未公刊手稿が所蔵されているパレルモ市立図書館は今年度も修復中のため一般公開していなかったが、交渉の結果、入館が許可され、必要な資料の複写申請をおこなうことができた。データで持ち帰った膨大な史料をリスト化し、翻刻、プリントアウトし、紙ベースでのファイリング作業を進めた。 これらの史料の一部を元に、11月13日東京イタリア文化会館において開催されたGiornata degli Italianisti(イタリア研究者の日)に出席し、“Vincenzo Ragusa e l’Arte Giapponese, su fonti inedite(未公刊資料による、ヴィンチェンツォ・ラグーザと日本美術)”を口頭発表し、本研究の重要性をイタリア側にも知らせることができた。また口頭発表を元に同タイトルのイタリア語論文に纏めた。論文はイタリア文化会館のweb上で一般公開されることになっている。 国内においては今年度も、ラグーザが滞在していた時代の日本美術・工芸に関する作品を数多く閲覧し知見を得るとともに、19世紀から20世紀初頭までに行われた工芸の展覧会に関する資料収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核を成すのは、パレルモ市立図書館に所蔵されているラグーザの未公刊の手稿である。今年度も同建物が修復中であったけれども、交渉の結果、史料の複写申請をおこなうことができ、史料を持ち帰ることができた。これらの史料の一部を元にイタリア語で論文を纏めることもできた。研究を確実に進めることができたと思う。 平成29年5月から7月までラグーザの故郷であるパレルモにおいて初めて回顧展“O'Tama e Vincenzo Ragusa: un ponte tra Tokyo e Palermo(お玉とヴィンチェンツォ・ラグーザ、東京とパレルモ間の橋)” が企画され、関連シンポジウムの開催も予定されている。筆者も本研究のこれまでの成果を踏まえた口頭発表をすることになっている。多くの研究者との交流により、さらに本研究を進展させることができると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続き、国内においてラグーザが滞在していた時代の日本の美術・工芸に関する作品を数多く閲覧し知見を得るとともに、19世紀末までに行われた美術・工芸の展覧会に関する資料収集をおこなう。ラグーザの日本滞在は、彼の美術・工芸観の形成に影響を与えていると考えられるからである。 パレルモに於ける展覧会“O'Tama e Vincenzo Ragusa: un ponte tra Tokyo e Palermo(お玉とヴィンチェンツォ・ラグーザ、東京とパレルモ間の橋)”に際し、平成29年6月9日現地に於けるシンポジウムに参加し口頭発表をおこなうことが予定されている。またこの機会に現地において補完的な調査もおこなう。引き続きイタリア人現地研究者らと連絡を取り合い、日本においてもシンポジウムを開催できるように協議を進めていきたい。 また今年度は、平成30年度の最終年に向けて、全研究を纏めるべく研究を進め、適切な時期に国内の学会等で成果を発表できるように努めたい。
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Causes of Carryover |
パレルモ市立図書館所蔵のラグーザの手稿の複写を一部しか依頼することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パレルモ市立図書館所蔵のラグーザの手稿を複写するための費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)