2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02174
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横田 洋 大阪大学, 総合学術博物館, 助教 (50513115)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本映画史 / 芸能史 / 日本演劇史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は明治末期から大正初期の映画興行について特に、「1、芸能環境の地政学上の変化」、「2、劇場認可の要件の変化」、「3、芸能と税制度」の3つのポイントにしぼり、調査を行い、研究を進めている。「1」は芸能興行地の問題で、映画館の増加とともに都市における興行地の地理的あるいはその役割の性格的な変化を検証している。「2」では映画館の増加とともに、従来当局によって制限されてきた劇場の数が増加していることを検証している。「3」は、この時期を通じて従来の芸能と比べて相対的に映画興行の影響力が高まっていることを芸能に関わる税制の面から検証していくものである。本年度はその成果として、『演劇学論叢』第17号に「明治期の映画取り締まり」という論文を発表した。主に明治40年代の東京の警視庁の映画取り締まりについて検証したものである。日本で最初期の映画検閲方針が示された明治42年と明治43年にそれぞれ出された警視庁の内規を検証した。その内規では映画の検閲と同様にあるいはそれ以上に映画館の市内各所への拡散を懸念していた。また従来の芸能取り締まりと異なり、児童や青年への影響を強く意識していることが判明した。映画の登場によって興行物あるいは興行地の性格そのものが変貌していった経緯を当局側の取り締まりのあり方から検証したものである。この論文は本研究の中では主に「1」を対象としたものだといえるが、当然「2」「3」とも強い関連がある。今後は「2」「3」のポイントとの関連も踏まえ、さらに調査研究を続けていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は明治末から大正時代にかけて、映画の登場が既存の芸能に与えた影響を客観的に検証することが目的である。初年度・昨年度に引き続き関連する資料収集を中心に計画を遂行した。公文書・統計書類の調査に加え、雑誌記事や新聞記事その他の様々な資料の調査を進めている。また本年度は東京の事例を元とした論文を発表したが、本研究では東京だけでなく、全国各都市の状況も調査することによって、その全体像を検証したいと考えており、そうした調査も続けているが、その調査についてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるが、引き続きこれまでに十分に行うことの出来なかった資料調査を進める。特に東京以外での都市の事例をより積極的に調査を行う予定である。同時にこれまでの成果をさまざまな形で発表していく。映画館の増加と並行して劇場の認可が緩和されること、映画館の増加とともに映画に対する税負担が重くなることなどは傾向としては概ね確認できるが、それを実証的に確認し、芸能環境全般の変貌と当局の方針の変化を関連付ける形で検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していた国外旅費を執行することが出来なかったことのなど影響で、約30万円の次年度使用額が生じた。 (使用計画)2017年度に予定していた旅費の執行を18年度に行い、全体として予定通りの計画を遂行する。
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Research Products
(2 results)