2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02186
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
木村 陽子 目白大学, 人間学部, 専任講師 (20736045)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リテラリー・アダプテーション / マルチメディア・アート / 小説 / 映画 / 演劇 / テレビドラマ |
Outline of Annual Research Achievements |
1今年度は研究第1年目だったが、春学期の期間、長期入院を要し大学を休職したこともあり、実際に研究を開始したのは9月以降だった。そのため、平成27年度の研究課題に大きな遅れが生じたことを最初にお詫び申し上げる。半期間の研究実績は、大きく以下の2点にまとめられる。 (1)リテラリー・アダプテーションの概念を導入することで表現活動の全容をより捉えやすくなるタイプの表現者の選定とデータベース化 各種メディアを横断的に逍遥したマルチメディア・アーティストたちの通史を作成するための基礎データとして、第二次大戦後から現在までに最低3ジャンル以上、複数のジャンルにまたがって表現活動を行った表現者を150人前後選定し、その業績を一覧化した。調査対象としたジャンルの項目は、現時点では、小説、映画、戯曲、アニメ、TVドラマ、ラジオドラマ、ドラマCD、演出、マンガ、ゲーム、音楽、ダンス、バラエティ、ミュージックビデオ、エッセイ、俳優、教育、絵本、翻訳、広告の20ジャンルに絞った。 (2)実践者への聞き取り調査の実施と論文化 本研究課題では、リテラリー・アダプテーションの視点を軸としたマルチメディア・アーティストたちの通史化のほかに、国内の代表的アーティストにインタビューを実施し、各表現者がどのような意図からメディアを選択したのか、各種メディア特性についてどのような考えを持っているのかといった問題も究明する。今年度はその足がかりとして、平田オリザ氏と松井周氏にインタビューを実施し、うち松井氏については、その成果を「表現者から見たリテラリー・アダプテーションとその再帰的影響― 劇作家・松井周の『演劇』と『小説』」(白鴎大学論集第30巻第2号)として論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、①表現者の選定・時代区分の検討、②実践者へのインタビューの実施、③個々の表現者・各種メディア・時代区分ごとの特徴の抽出、④研究成果の論文化と英訳の大きく4点を目標としていたが、このうち、予定通り遂行できたのは、表現者の選定、実践者へのインタビューの実施、個々の表現者の特徴の抽出、研究成果の論文化である。逆にほとんど手をつけられなかった課題は、時代区分の検討と区分ごとの特徴の抽出である。これは、インタビュー実施者数が少なすぎたことなどによるデータ不足に基づくものであり、次年度以降、善処していきたい。また、平成27年度から28年度にかけては、安部公房を中心とした日本の1950-70年代のリテラリー・アダプテーションの状況を論じた英語論文の執筆と海外学術誌への投稿を課題としているが、これについては現在、英訳作業をすすめており、次年度の投稿をめざしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究課題としては、大きく以下の5点を目標として掲げたい。第一に、平田オリザ氏に実施したインタビュー(2016年3月2日)の成果、およびアダプターとしての平田氏の業績(9ジャンルを駆使)をリテラリー・アダプテーション理論に基づき論文化することを目指す。第二に、次年度も引き続き、2-3名の表現者(できれば主たるフィールドが演劇でない人)にインタビューを実施したい。実施者の目処はまだついていないが、候補者の選定、および依頼を今年度よりも少し枠を広げて試みるつもりである。第三に、現在遂行中の英語論文を完成させ、英国オックスフォード大学が主催するアダプテーション学会の機関誌「ADAPTATION」への次年度の掲載を目指したい。第四に、今年度の課題として遂行が不十分だった、時代区分の検討と区分ごとの特徴の抽出について、なるべく早くに着手し成果を出したい。第五に、本研究課題の最終目標である研究成果の出版化について、構成や目次の検討、本文の執筆について、遅くとも次年度下半期には着手できるよう努力したい。
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Causes of Carryover |
当初は、27年度に海外投稿のための、和文英訳後の校正依頼のために、委託費が生じる予定であったが、当該論文の作成が遅延しているため、28年度支出見込みとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰延分の予算については、ほぼ委託費に使用する予定である。
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