2016 Fiscal Year Research-status Report
芸術と医療をつなぐメディアアート表現の可能性の探求
Project/Area Number |
15K02202
|
Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
森 公一 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (60210118)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 武久 成安造形大学, 芸術学部, 准教授 (10513682)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | メディアアート / 情動計測 / fNIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「芸術と医療をつなぐメディアアート表現の可能性の探求」を目的とし、鑑賞者の情動反応に基づくメディアアート作品を医療現場において応用することを目指している。視覚的・聴覚的刺激と鑑賞者の行為をインタラクティヴに関係づけるメディアアートの方法と、脳波測定等による脳機能の情報化技術を接続し、人の情動(快・不快)反応に基づく実験作品を制作するとともに、医療現場での応用を試みるものである。 2016年度については、実験作品《rendezvous》において取得したデータの分析を行い、脳波計による快・不快情動の計測の可能性を探った。2015年度に引き続き、多様なアプローチによる分析を試みたが、残念ながら医療現場での活用に耐えうる明快な結果を得ることができなかったため、作品そのものをリセットすることとした。 快・不快情動をクリアに計測できない原因として、二つの問題を抽出し課題設定した。一つは、作品によって鑑賞者に与える刺激の曖昧さという点である。光とノイズのバリエーションは、明らかに強い快や不快を誘発することは難しい。よって、より強い刺激を与える実験作品を構想することを視野に入れる。二つ目は、脳波計による快・不快情動計測の困難さである。リアルタイムでかつ非侵襲的に脳の活動を計測するには、脳波測定は優れていると言えるが、先行研究やこれまでの実験結果の経緯から見て情動計測という点においては限界がある。そこで、最近開発された小型のポータブルNIRSを用いた実験作品を構想することにした。 プレ実験として、IAPSの中から極めて強い快・不快情動を誘発する写真を選択して被験者に提示し、ポータブルNIRSによって脳血流の計測を行った。結果は、fNIRSを用いた先行研究の結果とほぼ一致しでおり、刺激が強ければポータブルNIRSによって快・不快情動の計測が可能であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに構想してきたメディアアート作品は、鑑賞者に与える視覚刺激(光)聴覚刺激(ノイズ)ともに比較的弱いタイプの刺激であり、快・不快情動の計測という点で明確な結果を得ることは難しかった。また作品では、リアルタイムで脳を計測することを前提としていたので、脳波計を用いてきたが、情動の計測という点では容易ではなかった。 計画していた医療現場での作品提示を実現するには、より明確な情動の計測が必要であり、上記二点を克服する必要があった。 以上のような経緯から、作品で用いる素材(鑑賞者に与える刺激の内容)や計測に用いる機材を変更し、新たな作品を構想することを前提に、実験内容や方法をリセットした。よって2016年度に開始することを計画していた、メディアアート作品の制作と医療現場での応用については実現できず、遅れている現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように、2016年度の後半に行ったプレ実験では、極めて強い快・不快情動を誘発する写真と、ポータブルNIRSによる計測を組み合わせることで、情動計測が可能であることが示唆された。そこで、現在は比較的強い刺激を伴う素材とポータブルNIRSを組み合わせたメディアアート作品を制作することを構想している。 2017年度、すでに強い快・不快情動を誘発する音素材を用いたプレ実験を始め、分析を行った。実験後のアンケートによれば、音の刺激内容と快・不快の印象に比較的強い相関関係が見られることから、快・不快時の脳血流における特徴的なパターンを確認するための前提条件は整ったと考えている。 今後、情動計測が可能になった時点で、最終的な作品の構想と展示の計画を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
当初予定していたメディアアート作品における刺激の内容と脳派測定装置の組み合わせによる予備実験の結果、快・不快情動の計測をクリアすることができなかった。そのため2016年度内に構想していたメディアアート作品の制作と展示が実現できず、それに伴って年度内に支出すべき費用が抑えられた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの問題を解決し、情動計測をクリアするために新たなメディアアート作品を構想している。現在進めている予備実験の結果をふまえ、2017年度中に新作の制作と展示を行うとともに、2017年度に予定していた本番作品における鑑賞者(被験者)のデータ分析を行う予定である。
|