2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02214
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山本 まり子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 非常勤講師 (80385971)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 和漢朗詠集 / 書 / 本文 / 世尊寺家 / 写本 / データベースシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
『和漢朗詠集』平安時代書写本に鎌倉時代以降の書写本(以下、後代の写本と略称)を加え、そこにおける戊辰切・葦手本・巻子本・下絵切の位置付けをめぐって考察を行った。2018年度はそのうちの戊辰切について論文化した。 平安時代書写本には見当たらず、後代の写本にのみ存する要素が戊辰切の中に少なからず確認され、その事例を基に戊辰切の後代の写本へ与えた影響について指摘した。また、戊辰切巻下の書と金沢本万葉集、及び本願寺本貫之集下・本願寺本順集との比較検討を行った。先学の研究において、それらは同筆であり、藤原定信の手によるという説があるが、それを決定づける証左は得られなかった。本調査結果から戊辰切は平安時代から鎌倉時代への移行期に位置し、葦手本(藤原伊行の真筆)より後に書写された可能性があると推測した(「『和漢朗詠集』戊辰切の位置 -書写内容・書に関する考察―」『大学書道研究』[2019年 全国大学書道学会])。 本研究の一環として『和漢朗詠集』写本の収集・集成、及びそのテキストデータ化に取り組んでいる。単なる情報の羅列ではなく、それらを研究者が活用し易い形にすべく、各写本の実態について考察を行い、関連性を見出す等、その考察結果に基づき情報開示方法の確立を目指した。その一連の研究成果を踏まえ、本作品の情報開示の在り方、情報処理の方法について公開シンポジウム「人文科学とデータベース」(於 静岡大学)において口頭発表を行った(『和漢朗詠集』データベースシステム構築を目指して」)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
後代の写本との比較検討を行ったことによって平安時代書写本に関する新たな知見を得ることが出来た。現在、調査段階の写本もあるものの、これまで行ってきた写本の関係に関する考察結果を踏まえ、収集し得た『和漢朗詠集』写本の情報開示方法の確立、及びデータベース化に伴う検索システムの構築に向けて、構想段階から実装段階へと進めることが出来た。さらに『和漢朗詠集』所収作品の出典に関する調査結果の当該データベースへの入力作業に着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
①『和漢朗詠集』書写本についての実地調査 ②『和漢朗詠集』書写本、及びそれに関する複写物・紙焼き等の入手 ③『和漢朗詠集』各書写本の位置、性格についての考察 ④『和漢朗詠集』に関する他の作品・文献(『和漢朗詠集』所収作品の出典等)の調査 ⑤『和漢朗詠集』書写本の本文集成、及びテキストデータ化の推進
|
Remarks |
現在、テストページのため、本URLは後日、変更の予定。
|
Research Products
(4 results)