2020 Fiscal Year Research-status Report
大庭賢兼の文事を視点とした毛利氏・吉川氏の文化活動再評価のための基礎的研究
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15K02223
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西本 寮子 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (70198521)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大庭賢兼 / 吉川元長 / 吉川広家 / 毛利元就 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の延長を願い出て認められたところではあるが、予定していた補充調査が行えない状況は変わらず、十分なまとめができていない。そのため、再度の期間延長を願い出たところである。現在は概ね以下のような状況である。 ①大庭賢兼の事績の一つである百首歌については、翻刻と内容の確認をすすめている。②伊勢物語の諸注集成についても確認を続けている。③宗文歌集については、転写が繰り返された山口県文書館所蔵の写本が唯一の伝本であるが、関連する史料に未収載の歌があったと推測されることがわかった。後世の史料であり、わずか一首ではあるが、毛利元就死後の弔いの状況を窺わせるものとして貴重な情報だと考えられる。そのため、引き続き復元箇所の推定検討を続ける。④令和2年度までに、これまで知られていなかった短冊一葉の伝存に関わる情報が得られたが、いまだ調査を行えていない。また、令和2年度末になって、知られていなかったと思われる大内氏周辺の人物の書跡の伝存が確認できた。所蔵機関の了承が得られれば、時代や資料の状況などの確認を行いたい。⑤歴史研究の成果として、大庭賢兼の名が記される資料は全て確認されていると考えられてきたが、再検討の必要があるのではないかと考えている。大内氏の旧臣として毛利氏に取り立てられた直後の活動について再整理を行いたい。 こうした事を踏まえ、賢兼自身の事績ではないが、存命中の文化状況を推測するため、周辺の武将の事績について再検討する必要性に気付いた。 身辺あわただしい状況が続いたため遅れ気味になり、さらに延長を認められて続けてきた調査・研究の仕上げの一年である最終年度においては、以上のような状況を踏まえ、報告を行いたいと考えている。また、この時期になっても新たな情報が得られていることから研究期間終了後も引き続き研究を続けたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最長期間の5年を研究にあてることを企図して申請したが、思わぬ事態が続いたことで延長、再延長を余儀なくされた。当初から遅れ気味であったことに加え、県境を越える移動が制限されたことによる補充調査の遅れ、過去に収集したものを含めて資料の整理の遅れが最後まで尾を引いた。 歴史研究においては大庭賢兼についての新たな情報は得られないとされてきたというが、後世のものながら関連する情報が得られたこともある。小さな点をつなぎながら、賢兼の足跡を追い、その文芸活動の一端を解明をあらためてめざしたい。 再延長を認められた最終年度においては大内氏、毛利氏へと主家を変え、吉川元長など毛利元就に連なると人々とつながりを持ちつつ戦国の世を生き抜いた一武将の生きざまの一端を描き出したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の終息が見通せないことから、調査にこだわるのではなく、現在手元に収集できている資料や情報などに基づき、大庭賢兼の事績を一つ一つ記述することをこころがけたい。文芸活動の全容の解明を急ぐのではなく、『伊勢物語』『源氏物語』にどのようにかかわり続けたのか、その時々の思いの特徴と一端を救い上げること、武将として職務を遂行するなかで、和歌を学び百首歌を詠進し、のちにはいくつかの連歌会に参加した賢兼の足跡の一端をたどること、毛利元就の死後は、元就をしのびつつ、おそらくは輝元の右筆としての活動をつづけ、その活動のなかで文芸に造詣の深かった吉川家に出入りして元長と関係をつないでいた姿を追い求めることなど現在までに判明したことについてまとめていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による環境の変化、オンライン授業への対応等に忙殺され、思うように研究に時間を充てることができなかった。補充調査も思うようにできないことが続いたこともあり、予定額を使用することができなかった。このようなことから一時は返還も考えたところであるが、最終年度でもあったことから可能な限り成果をまとめることで区切りをつけることが必要であると考え、研究機関の再延長を願い出たところである。最終年度については、当初から報告書を取りまとめるための経費を中心に申請していたことから、再延長後についても 同様の使用を予定している。
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