2016 Fiscal Year Research-status Report
デジタルアーカイブ構築による人文書院戦前期資料の多面的文化史研究
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15K02241
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
一柳 廣孝 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (40247739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 英彦 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 専門研究員 (10712028)
菊地 暁 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (80314277)
吉永 進一 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90271600)
石原 深予 京都府立大学, 文学部, 研究員 (10748320)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本心霊 / 人文書院 / 渡辺藤交 / 福来友吉 / 野村瑞城 / 清水正光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度までに「日本心霊」の裏打ち処理、脱酸素処理を全体の三分の二まで進め、それらの資料体のPDF化を進行した結果、まとまった研究、分析をおこなう土壌が整いはじめた。そこで2016年12月17日、京都大学人文科学研究所において、京都大学人文科学研究所共同研究(2014~16年度)「日本宗教史像の再構築」との合同企画として、ワークショップ「日本心霊学会から人文書院へ 新資料調査の中間報告」を開催した。当日は科研費メンバーによる口頭発表として、吉永「霊肉救済・霊俗融合―精神療法家、渡辺藤交」、一柳「福来友吉と日本心霊学会」、栗田「日本心霊学会と伝統仏教―雑誌『日本心霊』の調査から」、菊地「野村瑞城について知ってる2、3の事柄」、石原「編集者清水正光と戦前期人文書院における文学関係出版」をおこない、現段階におけるそれぞれの研究成果を明らかにした。また、「日本心霊」を刊行していた日本心霊学会の後進である人文書院に長く勤務し、その歴史に精通している佐藤良憲氏をお招きし、「人文書院100年のあゆみ」と題した講演をしていただいた。あわせてラウンドテーブル「人文書院調査の来歴と今後」によって、現在時における人文書院の歴史的経緯、および「日本心霊」をめぐる今後の研究の指針について議論した。また、科研費メンバーの個々の研究も着実に進展しており、それぞれが多くの業績をまとめている。例えば一柳は『怪異の時空』全3巻の監修を務めて、広く近代日本における霊術流行の背景を掘り起こした。また吉永は『近代仏教スタディーズ』の共編者として、仏教の文脈から見た近代日本の心霊シーンに注目した。その他の業績の内容に関しては、後にまとめることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の目標としていた「日本心霊」の資料的な整備が順調に進んでおり、PDF化を図ったことで、格段に作業効率が上がった。残っている資料も裏打ち処理と脱酸化処理、PDF化を進めて、平成29年度中にすべて完了する予定である。また資料分析も、個々のメンバーの関心に合わせて進んでおり、28年度はワークショップにおいて、各々の研究成果を披露することができた。仏教、霊術、心霊学、文学、民俗学、出版文化史など、多様な角度からの考察が披露され、あらためてこの資料体の分析を進める必要性を痛感した。またこの場において、かつて人文書院で初代社長、二代目社長とともに勤務していた方々とお会いすることができ、貴重なお話をうかがうことができた。日本心霊学会から人文書院に移行する状況を考えるうえで、重要な示唆を得たと考えている。あわせて、新資料を用いた研究も個々に進展しており、多くの研究成果を公にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
科学研究費助成事業の最終年度を迎えるにあたって、なるべく早い段階で残っている「日本心霊」の裏打ち処理と脱酸化処理、PDF化を進めて、資料体を完成させるとともに、それらの資料体を活用し、個々の関心領域に合わせた研究成果をまとめる。具体的には、昨年度に引き続くワークショップの開催、個々の研究成果にもとづく学会発表、また今後の研究のさらなる進展を図るために、資料体をDVD化し、利用希望者に広く頒布することを考えている。
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Causes of Carryover |
「日本心霊」の裏打ち処理、脱酸素処理をお願いしている業者の都合で、すべての資料の処理が完了しなかったため、次年度にスライドして残りの資料の処理を依頼することとなった。今年度で、すべての資料の処置を終了させる予定である。あわせて、全資料のPDF化も行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中に、残っている「日本心霊」の裏打ち処理、脱酸素処理を終了させ、あわせて全資料のPDF化を完了させる。そのための資金として、ほぼす全ての残額を使用する予定である。「日本心霊」の完全PDF化によって、「日本心霊」が広く研究に寄与できる資料体として認知され、より開かれた環境で、宗教史、思想史、出版文化史、文学研究など、多様な学問領域からのアプローチを活性化することになると考えている。
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Research Products
(19 results)