2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02259
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
内藤 千珠子 大妻女子大学, 文学部, 准教授 (20433708)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文学 / ジェンダー / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
大正・昭和期の新聞・雑誌メディアの言語と小説の言語を主な分析対象とし、ジェンダーをめぐる言説論理が検閲制度とのかかわりによってどのように形成されたのかを明らかにしようとするのが、本研究の目的である。戦前期の検閲は、制度としての伏字を基本として実践されたが、本研究では検閲とジェンダーという主題に基づき、伏字とジェンダーの力学の関係性を検証した上で、伏字のもつ記号的効果を理論化し、検閲という観点から、日本語文学におけるジェンダー編成を明らかにすることを目指した。 本年度は、占領期の資料分析を中心に調査と考察を行った。大妻女子大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館、都立図書館等で、戦中期と戦後期の言説を資料として収集するとともに、調査を進めた。その過程で、戦時性暴力の記憶がどのように物語化されるかという観点から、占領期の言説における女性身体とセクシュアリティの表象、それにかかわる検閲的な禁止の問題について考察を進めた。 また、ジェンダー論やセクシュアリティ研究、クィア理論に関する理論的文献について、研究会等での発表や討議を通じて、新たな理論的地平を獲得することにつとめた。そのなかで、近代的な言説のなかに定着してきた戦争や植民地主義の論理が、物語のレベルでは、女性身体の表象を効果的に取り入れることで、暴力を肯定的に語る文法を生み出していることを、ジェンダー制度と検閲との関わりを通じて検証し、国内学会、国際ワークショップにおいて研究発表をおこなった。 かつての伏字による検閲とは異なり、占領期には不可視にされた検閲が媒介するかたちで、言説の生産がなされたが、そこに生じる連続性と切断性について、性暴力というテーマを設定し、分析をおこない、考察の一部を論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集としては、「日本占領期性売買関係GHQ資料」など占領期の資料と、戦時中のメディア資料を中心に分析を進め、言語態分析をおこなった。 資料をもとにしながら、戦争とジェンダーをめぐり、戦時性暴力と証言というテーマで考察をすすめた。その内容を、UCLAで開かれた国際ワークショップで発表するとともに、日米間の研究者同士で議論を共有することで、研究交流を深めることができた。また、ジェンダー・クィア研究会への参加を中心として、理論的な問題を共有しながら研究活動をおこなった。韓国で開かれた国際ワークショップにも参加し、関心を共有することができた。 研究発表と、その内容に基づいた論文化の作業を進めることができ、研究の目的である「検閲とジェンダー」について、考察を深めることができた。進捗状況はおおむね順調だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、特に大きな問題はなく研究を進めることができたので、当初の研究計画にそって研究を推進していきたいと考えている。大妻女子大学図書館、国立国会図書館、国文学研究資料館や、国内外の研究施設・図書館を利用し、一次資料の収集にあたりたい。 平成30年度は、引き続きジェンダー・クィア研究会や東アジア女性文学研究会での活動を継続するとともに、アメリカや韓国の研究者とも連携するかたちで、研究発表と研究交流を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)