2015 Fiscal Year Research-status Report
火野葦平の戦中・戦後研究―1930~50年代の自筆資料を基礎として―
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15K02279
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 広東作戦 / 香港 / 新中国 / 従軍手帳 / インパール作戦 / 広東 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、火野葦平の広東作戦従軍記と火野葦平が1955年に参加した「アジア諸国会議」の後の平和活動を中心として研究をおこなった。火野は、1955年4月6日から10日にかけてインドのデリーで開催された「アジア諸国会議」に日本の文化問題代表として参加した。この会議は、アジア諸国の平和と連帯のために開催され、文化問題、政治問題、経済問題、宗教問題、科学技術問題など5日間にわたって、長時間多くの討議がなされた。結果、アジア諸国の連携と平和共存の意識が強まった。「アジア諸国会議」に参加した日本代表団の一部の28名は、インド訪問後は、中華人民共和国、すなわち新中国を視察することになる。火野も28名の1人として新中国の視察に参加した。カルカッタ、ラングーン、バンコク経由で香港に同年4月20日に入国し、21日より新中国を視察していく。平成27年度は、火野の中国視察のうち広東から、漢口への視察について、火野が撮影し、玉井史太郎氏所蔵の写真や、見聞記、日記、この中国の視察をルポルタージュ風に描いた作品『赤い国の旅人』などを用い、詳細に明らかにした。論文にまとめることにより、火野の新中国視察の一端や、1955年当時の中国の良さや問題点ががよくわかった。 また、火野の広東作戦従軍記については、未発表の火野の従軍手帳を翻刻し、一般向けの雑誌に公開した。広東作戦の真実について浮かびあがったことは意義深い。さらに、平成27年度末にはインパール作戦について調査に着手し、口頭発表を行うことができた。いずれも科研費のテーマである火野の自筆資料を詳しく検討、精査、公開することによって進んだ研究であり、研究テーマにふさわしい研究が推進できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
火野の自筆資料を解き明かす研究が少しずつ進んでおり、「アジア諸国会議」後の火野の平和活動について研究を進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成27年度末に着手したインパール作戦について研究を遂行する。アジア太平洋戦争の真実について知るべく、火野の自筆従軍手帳を手掛かりに研究をすすめる。
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Causes of Carryover |
平成27年度春学期は、関西大学国内研修員となっており、研修員の任務を遂行せざるをえなかった。よって科研費の研究は、秋学期、すなわち平成27年10月から注力することとなり、次年度使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成28年6月24日から26日に中国アモイ大学で開催される国際シンポジウムで、火野葦平と『聊斎志異』の発表が決定しており、外国出張旅費に使用する。また平成28年予定額は、平成28年8月や10月に開催される北九州での研究会の国内旅費、ならびに、平成28年7月、東京での火野葦平従軍手帳翻刻、解題等の打ち合わせ旅費として使用する予定である。さらに火野の自筆書簡の購入費として使う計画を立てている。
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Research Products
(8 results)