2016 Fiscal Year Research-status Report
火野葦平の戦中・戦後研究―1930~50年代の自筆資料を基礎として―
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15K02279
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 聊斎志異 / 河童 / GHQ / 石と釘 / 亡霊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、主に火野葦平の文学とフォークロアとの関連の研究について考察した。例えば、火野葦平の九州地方の民話と河童物についての研究と『聊斎志異』の改変物を研究した。より具体的に説明する。河童物については、火野の「石と釘」「亡霊」の二作の内容を分析し、九州地方に古くから伝わる民間伝承や史跡と作品の関係について論じ、2016年8月にルーマニアで開催された国際シンポジウムで詳しく発表した。また、火野の「石と釘」の由来を知るために、北九州市若松の高塔山で調査を行った。釘カッパと呼ばれる、背中に釘を刺した石地蔵を調査し、写真撮影などを行った。十数編ある『聊斎志異』の典拠について明らかにし、『聊斎志異』作品群から、一作をとりだし、研究を推進し、厦門大学で開催された国際シンポジウムにて研究発表をした。 また、火野葦平と戦争文学に関しても研究を進めた。現存している6冊のインパール作戦の『従軍手帖』を読み込み、火野がどの地域を出発して、ビルマのアラカン山脈やイラワジ河などを進軍していったのか検討した。インドのインパール目前で、なぜ火野が引き返さねばならなかったのか、当時の師団長との交流などを調査し、「弓」師団の参謀と火野との関係を、遺族を通して知り、「弓」師団の参謀が火野について記している『従軍手帖』や、火野のことを記した手紙もを閲覧させていただいた。現在は、2017年中に集英社にて刊行される火野葦平インパール作戦『従軍手帖』の「解説」や「改題」の執筆に取り組み、その成果を2017年夏ごろに公表する予定である。 さらに、「アジア諸国会議」後に火野が訪れた中国について研究した。火野の訪れた広東地域を視察し、現地調査を行った。また、戦時中に広東で火野が滞在していた場所などを視察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、①火野葦平とフォークロア②火野葦平と戦争に関して研究を進めた。著書2冊、学会論文3本、国際学会で3回の発表という研究成果をあげることができた。その他、社会人講座での講演活動や読書会などをすることもできた。国際学会では、各国の研究者と意見交換をし、知見を広めることができ、有意義であった。国際学会では政治学、思想史研究など異分野の諸先生方とも出会い、貴重な意見交換をすることができた。異分野の諸先生方のコメントは、思わぬ発見があり、かなり役に立った。こうして、少しずつではあるが、着実に研究が進み、日本語以外の、中国語や、英語での国際的発信もできている。また、現地資料調査なども行うことができた。特に中国の広東地域と火野葦平関係についての調査は、現地の方々の協力も得られ、これまで以上に進めることができた。さらには北九州の民話の調査や、現地での史跡撮影などもでき、河童伝説と火野作品についての考察も進んでいる。以上より、おおむね、研究テーマは順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、インパール作戦に関した、火野の作品の分析や、火野の青春時代の日記研究、さらに引き続き火野葦平の河童物や『聊斎志異』物などの研究を行いたいと考えている。インパール作戦に関しては、2017年5月14日に、北京外国語大学にて開催される東アジア文化交渉学会で研究発表を行う予定となっている。また、同年6月に、国士館大学目野准教授代表の科研費の研究で、火野葦平とインドの講演が予定されている。さらに同年9月に行われる、ルーマニアでの国際シンポジウムにて、講演などのレクチャーを行うことが決定している。また、火野の戦後の活動や、インパール作戦以外の戦争についても考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に、国内での資料調査を計画し、ルーマニアでの国際シンポジウムや中国での国際シンポジウムに参加することを予定しているため、旅費として残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
北海道小樽、北九州、東京での研究調査旅費や海外発表、研究調査旅費として使用する。
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Research Products
(8 results)