2018 Fiscal Year Annual Research Report
During a competition and the postwar study about Ashihei Hino
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15K02279
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 火野葦平 / インパール作戦 / 陸軍報道班員 / 陸軍南方軍第33師団 / 異民族 / 象と戦争 / 田中信男中将 / 聊斎志異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、火野葦平が陸軍報道班員として1944年の4月から従軍したインパール作戦に関する研究を行い、関連作品の論考執筆や学会発表などを重点的におこなった。以下にその具体的内容を記す。 火野葦平は、インパール作戦従軍中、一時的に第33師団、通称「弓」師団とともに行動し、「弓」師団の最初の柳田元三師団長、二番目の田中信男師団長に会って会談し、インパール作戦の苦悩や軍上層部への不満などを聞いた。そして、田中信男中将からは、自分は死ぬかも知れないからと、自らが記した陣中日誌『戦いの記』など二冊を託されたのであった。火野は、この二冊を大切に持ち帰り、田中氏の遺族に渡したが、現在は、北九州市立文学館に寄託所蔵されている。本年は、この田中信男著『戦いの記』を翻刻し、関西大学東西学術研究叢書のシリーズとして刊行し、「解題」「解説」を付して広く公開した。『戦いの記』には、英国と違う弱体的な軍事力の中で、多くの日本軍兵士たちが餓死したり、負傷し、死に至った悲惨な戦闘の状況が記されていた。「死の作戦」と呼ばれた無謀な作戦の全貌が、師団長の苦悩と共に克明に活写されている。特に、注目すべき点は、インパール作戦が長引くにつれ、田中信男氏が、更迭された前師団長柳田氏の認識に理解を示し、またインパール作戦実施に強硬に反対して更迭された小畑参謀の見識が正しいと考え始めたところにある。戦時中に陸軍中将が、軍の命令に対して間違いを認めていた点は興味深い。戦後七十年以上を経た現在、戦争の記録や記憶を風化させないために、意義深い研究を推進できた。さらには、火野のインパール作戦をふまえた作品「異民族」「象と兵隊」「青春と泥濘」の、学会発表などをし、作品論としてまとめることができた。 また本年は、火野葦平の『聊斎志異』改変作品のうち、「王六郎」の研究発表をし、研究論文を発表することができた。
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Research Products
(7 results)